犬の足びっこ・足ひきずり

犬の足びっこひき治療 ( 2 )犬が足をびっこ引いた場合に疑う14の主な原因リスト

ゴールデン・レトリーバーセナ2歳8ヶ月

動物病院での診断の結果、今回セナが後ろ足をびっこ引いた原因は、靭帯部分断裂の可能性が高かったのですが、そもそも犬が足をびっこ引いた時にはどのような原因が考えられるのでしょうか。

前回の記事:『犬の足びっこひき治療 ( 1 ) 動物病院でのレントゲン撮影と費用

足びっこがまた起こってしまった際に、見返せる様にここにまとめておきたいと思います。実際に動物病院での診察で獣医師に伺ったこと・書籍で調べたことを元にしています。

まずは主に疑う14の原因のうち、最初に疑うことの多い皮膚・骨・関節の疾患10個についてです。

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犬の足びっこ/跛行で最初に疑う原因10
【皮膚・骨・関節系】

まずは、犬が足をびっこ引いた時に最初に考えるのは皮膚・骨・関節の疾患。

※跛行(はこう):医学用語で足をびっこ引いたり、引きずって歩くことを指す

 
 

犬の足びっこ/跛行で最初に疑う原因10つ

  1. 足の皮膚炎や肉球の外傷
  2. 痺れ
  3. 筋肉痛
  4. 靭帯部分断裂
  5. 靭帯断裂
  6. 脱臼
  7. 骨折
  8. 股関節形成不全
  9. リウマチ関節炎
  10. 離脱性骨軟骨症

犬が足をびっこ引いた時は、最初に肉球に怪我がないか皮膚炎で痛がっていないかを確認し、その後骨・関節そのものの炎症を疑っていきます。

動物病院での実際の診察も、同じ様な手順を踏んでました。

犬が足をびっこ引いた時に考えられる骨・関節系の10の原因について、症状や足びっこの特徴、発症の多い年齢や犬種等をまとめました。

原因症状や特徴足びっこの特徴好発部位や年齢
足の皮膚炎や外傷皮膚炎がかなり悪化した場合、痛みが強くなり足をびっこ引くこともある。肉球に怪我やトゲが刺さっている場合、夏はアスファルトでの火傷などが引き金になることもある。皮膚炎や外傷の程度による 
痺れ一定の体制を続けた場合に起こる。すぐに治る。着地可能 
筋肉痛長時間の運動や急激な運動を行なった後に発症する。 着地可能 
靭帯部分断裂犬で特に損傷が多い靭帯は、膝の前十字靭帯 。老齢化に伴って靭帯が弱くなること、肥満による負荷が基礎要因で、膝関節に急激な力が加わり発症することが多い。近年では若齢犬でも発症することがわかってきた。 着地可能・足をびっこ引きながらでも歩けることが多い。中大型犬に多いが小型犬の発生も増加傾向。
大型犬:4歳以下
小中型犬:7~10歳に好発
靭帯断裂完全断裂の場合は、脚をほんの少し地面につけるか、完全にあげたままになることが多い。
脱臼脱臼は、肩・膝(膝蓋骨)・股関節が多い。

先天性と後天性(外傷性)があるため、数年かけて引き起こされるものと、そうでないものがある。患部が腫れ、熱をもつなどの炎症症状も伴う。

 外傷性の脱臼は、痛みが伴うため足を着地できず持ち上げたままになることが多い。
但し、時間が経過すると痛みに耐えながら患肢に体重をかけて歩こうとしてしまう。
 
骨折外的な力が加わり発症する外傷性骨折が多いが、病的骨折もある。

 

くる病・骨腫瘍・骨感染・栄養障害などによって簡単に骨折してしまうことがある。

 骨折している脚は地面に地面につくことさえできないことが多い。 
股関節形成不全股関節の遺伝的要素が強い。遺伝的要素に加え、栄養素の不均衡・栄養素の過剰摂取が発生を助長すると考えられている。

たんぱく質・灰分(ミネラル)、特にカルシウムの過剰摂取が関係しているとされる

着地可能。多くの例では両足にびっこが見られることが多いが、片足のみの症状もある。大型犬・超大型犬に好発

1歳までの幼齢期に初期症状が見られることが多い

リウマチ関節炎リウマチ関節炎にかかった犬の1/3には、発熱や食欲廃絶などの全身症状が表れる。 左右両側対象的に発症することが多いため、足びっこを左右交互にすることもある。成犬期(4~6歳に好発)
離脱性骨軟骨症離脱性骨軟骨症は、膝や股関節の後脚部にも発症するが、前脚に関わる肩関節に多発しやすい。そのため、前脚でびっこを引いている際は、離脱性骨軟骨症の可能性もある。 びっこのひき方は、スキップよりも引きずることが多い。全く足を着地できない重症例は、まれ。大型犬種の成長期

このうち、犬の関節疾患で特に多いのは、股関節と膝関節の疾患。

そして膝関節では、『膝蓋骨脱臼』と『前十字靭帯の断裂』の疾患が多いそうです。

肉球の怪我や皮膚炎の可能性が低いと診断されれば、レントゲン撮影で骨の異常がないか関節が炎症を起こしていないかを確認していくことになります。レントゲンと併せ足びっこの症状、つまり足は多少地面につけるのか、足を全くつけたがらないのか、他に全身症状が伴っていないか等で原因を推測していく様です。

足びっこの根本原因が骨・関節系ではなく、神経系・内臓系や腫瘍系にあった場合は食欲減退などの全身症状が続く可能性が高いです。

犬の足びっこ/跛行で最初に疑う原因4【腎臓・腫瘍他】

足の外傷・皮膚炎、骨・関節疾患の他に考えられる原因は、主に4つです。

  • 腎臓疾患
  • 椎間板ヘルニア
  • ダニ麻痺症
  • 骨腫瘍(こつしゅよう)

これら4つの原因は、足のびっこ以外に全身症状を伴うことが多い様です。各疾患の概要と特徴、発症の傾向については次。

原因症状や特徴好発傾向
腎臓疾患腎臓の機能不全、腎不全は急性腎不全・慢性腎不全の2つに分けられる。急性腎不全は、尿路結石などによって引き起こされるものが多く、数時間から数日で急激に悪化する。

慢性腎不全の場合は、数年かけて悪化することが多く、初期は症状が出にくい。進行するにつれて水を多く飲むなどの症状が出始めるが、足をびっこ引くなどは更に腎臓機能低下が進行した段階での症状であることが多い。

 
椎間板ヘルニア椎間板ヘルニアは、椎間板の変形によって脊髄の神経が傷つき様々な神経障害を起こす。

発症部位が頸部(首)・胸部・腰部のどこかによって症状の強弱は異なるが、重症になると自力で起き上がれず、四肢の麻痺を引き起こす脊柱の疾患は、椎間板ヘルニアのほか、環軸椎亜脱臼(かんじくついあだっきゅう) ・変形性脊椎症などがある。

【軟骨生異形成】
ダックスフンド・ペキニーズ・シーズー・ビーグルなどの犬種の若齢期に急速に進行することがある
【線維用異形成】
犬種関わりなく、加齢により病状が進行する
ダニ麻痺症ダニに吸血されることで引き起こされる神経麻痺症。

万が一、神経毒を持つマダニに吸血されると神経毒が回り麻痺症状が起こる。後脚だけのびっこ等だけでなく、全身の筋肉への神経麻痺が起こるのが特徴。

神経毒を持つマダニは900種の中で5種のみであり、現在日本での生息は確認されていない
骨腫瘍骨腫瘍は、該当部位で発生した原発性骨腫瘍と、転移してできた転移性・続発性骨腫瘍に分けられる。

犬では続発性よりも原発性骨腫瘍が非常に多く、そのほとんどが悪性腫瘍である。前脚は肘から離れた部位に、後脚は膝に近い部位に多発。足のびっこは一つの症状であり、初期は足の着地が可能。患部には、痛みが伴う。

大型犬種・超大型犬種に多く、骨腫瘍発生のピークが2歳年齢と9歳年齢にある

ダニ麻痺症について

獣医師によるとダニ麻痺症については、他の治療をしていってそれでも治らなかった場合に、最後の最後に考える可能性なのだとか。なぜなら、ダニが原因だ。と検査する方法がないだそう。そのため、消去法でたどり着くことになるそうです。

その上、フロントラインなどのダニ・ノミ駆除薬をしていることは大前提で治療に入るから。これが理由でした。

ダニ麻痺症にかかった場合の犬の症状については、フジテレビ『奇跡体験!アンビリバボー』で以前に放送された内容がとても分かりやすいです。

犬のダニ麻痺症

奇跡体験!アンビリバボー 2016年9月放送 犬のダニ麻痺症

実際に、キャンプ中にダニに噛まれ、ダニ麻痺症に陥った犬が全身麻痺を起こします。その原因が直前までダニだとわからず安楽死になってしまいそうだった・・・というあらすじです。

以上が、犬が足をびっこ引いた時に疑う14の原因でした。

この他にも足のびっこが症状として出る疾患はあるかもしれませんが、今回セナの足びっこにあたり調べた原因はこの限りです。

足びっこを引いて寝込むなんて2歳8ヶ月にして初めてで、股関節形成不全?最悪は、骨腫瘍?どちらもレトリーバーを含めた大型犬、若齢期でよくかかるものだから、もしかしたら・・・と頭をよぎりました。

食欲がなくて全く動きたくなさそうにしていたのが、全身症状かと思い心配が強くなったのですが、今回は痛みから食欲がなかった様です。骨・関節系が直接的な原因の場合、痛みが治まってくれば食欲が戻ってくることが多いようなので、足びっこと食欲不振が両方続くようだと要注意のサインなのかもしれません。

今回、セナの後脚びっこの原因は靭帯部分断裂・靭帯断裂に絞られ、結果的に靭帯部分断裂だったと考えられます。『もし靭帯断裂していたら大型犬種の場合は間違いなく手術が必要』だそうです。

 
 

足びっこから通常に戻すための散歩リハビリ

足びっこを引いている時の散歩について、獣医師のアドバイスは、

『散歩を極力減らす。出来ることなら散歩はしないでほしい。』でした。ウンチ、おしっこの排泄を外でしかしないなら仕方ないけど、それでも、5分、10分。短ければ短い程いい。

散歩リハビリは、これをまずは1週間。つまり、1週間安静に。痛みどめの処方はなし。痛みどめを飲むと無理して歩いてしまう。痛みを感じているうちは、犬が足をかばっている、びっこ引いているそのままでいいからと。

1週間後以降、様子を見ながら歩く時間をふやす。まずは、平坦な道から。坂道はその後。1ヶ月かけてじっくりと元のペースまで戻すこと。でした。

散歩をさせてあげたい!という気持ちをグッとこらえて『今日はここでもう帰ろうね』とセナに話す、そんな毎日でした。

最後に、犬の足びっこはすぐに動物病院にかかるべきか、です。

犬の足びっこはすぐに動物病院にかかるべきなのか

担当獣医師からは『足びっこを引いても3日はみても大丈夫』だと伺いました。もちろん、これは骨折や重篤な場合を除いてです。

反対にいえば、3日間様子をみても、まだ足の様子がおかしく足をびっこ引いているようだったら動物病院にきて下さいと。すぐに行けるのがベストかと思いますが、様子をみたとしても3日。ということでしょう。

犬が足びっこを引いた時の原因を調べていて思いましたが、犬の足びっこは病気のサインであることが多いため、痺れや筋肉痛・治療中のことが原因だと分かっていない限り、動物病院でレントゲン検査なりでしっかりと調べてもらった方がいいなという印象でした。

足に負担がかかったまま歩き続ければ、間違いなく更に負担になってしまうでしょう。しかし、犬は痛みを我慢してしまうので『あれ?また歩ける様になってから大丈夫かも』そんな勘違いに注意だなと感じました。

ちなみに、セナが靭帯部分断裂した原因はなんだったのか?というと、これは正直わかりません。獣医師の感想は『うーん。老犬に多い症状なんだけどな・・・』と一言。

ゴールデン・レトリーバーセナ2歳9ヶ月
ゴールデン・レトリーバーセナ 2歳9ヶ月

セナは、まだ3歳手前。しっかり関節ケアをして、いつまでもしっかりと自分の足で歩けるようにしていこうね!

【追記】

前十字靭帯の損傷について、担当獣医師からはシニアに多いと伺いましたが、前十字靭帯の損傷・断裂は若年齢犬でも可能性が高い疾患だそうです。

1歳すぎると、前十字靭帯の損傷が起こってもおかしくない反面、初期段階では整形外科専門医でない場合は見逃すことが多いそうです。レントゲン撮影では、靭帯損傷しているかどうか分からず、足を引きずる、びっこを引く、明らかな痛みを訴える様になった時にはかなり靭帯損傷が進んでいるそうです。

そのため、セカンドオピニオンや整形外科に力を入れている動物病院に診断を求めることも大事だと思いました。

参考書籍:イラストでみる犬の病気 各病気の詳細における足の跛行に関する記述部分を参考
各表オリジナル作成


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