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【犬の股関節形成不全って何?】概要・評価ランクや検査について[レトリーバーの遺伝的疾患]

【犬の股関節形成不全って何?】
概要・評価ランクや検査について
[レトリーバーの遺伝的疾患]

ゴールデン・レトリーバー セナ 11ヶ月

ゴールデン・レトリーバー セナはまもなく1歳を迎えます。ゴールデン・レトリーバーの遺伝性疾患の筆頭といえば『股関節形成不全』。1歳(12月齢)を過ぎると、股関節形成不全の評価検査・診断が可能となります。

セナの出身ブリーダーでは、親犬について股関節形成不全の検査は行われています。しかし、親犬が現時点で股関節形成不全を患っていないからといって、子犬が股関節形成不全を発症しないかといえばそうではありません。

飼い主として家族として知っておくべき愛犬の遺伝子疾患。股関節形成不全が一体どういう症状なのか、評価ランク検査とは何か、検査をする場合の流れ、検査はすべきなのか、などについてまとめました。

 
 

犬の股関節形成不全とは

まず、「犬の股関節形成不全」の基本的なことについてです。

那須高原イーノの森ドッグラン

犬の股関節形成不全とは

船橋市のかつまペットクリニックの股関節形成不全の説明がとてもわかりやすかったので、引用させて頂きます。

犬の股関節形成不全とは

股関節形成不全とは、犬の股関節が発育の段階で形態的な異常を起こし、様々な症状を引き起こす病気です。一般的に両側の股関節に発症することが多いといわれておりますが、片側性の場合もあり、大型犬や超大型犬での発症が多くみられます。

下記画像の左が正常、右が股関節形成不全を起こしている状態です。

レトリーバー種に多い股関節形成不全

凸凹でぴったりはまり動くのが正常ですが、股関節形成不全では関節の形が浅い・変形しているなどの理由で関節のはまりが緩くなってしまいます

股関節形成不全の要因

股関節形成不全の要因は

  • 遺伝的要因が7割
  • 環境的要因が3割

といわれているそうです。

遺伝的要因には、両親の遺伝疾患と犬種の遺伝疾患が加わります。環境的要因には、成長期に関節に負担をかける生活をしていることで健全な関節の成長を妨げてしまったり、成長期をすぎたとしても関節に負担がかかる生活を続けていることがあります。

小型犬に比べ、特に大型犬・超大型犬は短期間で身体が成長するために、成長期は筋肉と関節のバランスが崩れやすく成長途中の関節はより負担がかかりやすい状態となるといわれています。大型犬の子犬期に運動させすぎないように、といわれるのはこのためです。

 

では、犬が股関節形成不全を起こしているとどのような症状がでるのでしょうか。

犬の股関節形成不全の兆候と症状

犬に関する本・研究・学問などのイメージ画像

犬が股関節形成不全になった時の症状について、日本動物遺伝病ネットワーク:JAHD Networkの股関節形成不全のページより引用・記載させていただきます。

  • 不自由な足取りで歩く(跛行:はこう)
  • 歩き始めに、こわばった歩様になる
  • 散歩の途中で座り込む
  • 走るのを嫌がる
  • 走る時に両足をそろえたうさぎ跳びのようにする
  • ジャンプをしなくなる
  • 階段の上りを嫌がる
  • 寝ていることが多く、寝ている状態から起き上がるのが困難
  • 頭を下向き加減にして歩く
  • 歩くときに腰が左右にゆれる(モンローウォーク)

中には他の関節異常などでも出る症状がありますが以上が股関節形成不全の典型的な症状になるそうです。

このような症状から股関節形成不全や関節異常が疑われた場合には動物病院で検査・治療をすることになるわけですが、股関節形成不全を発症する前に、股関節形成不全の可能性の大小を図る評価検査があります。

 

 
 

愛犬の股関節形成不全の可能性を検査する

日本動物遺伝病ネットワーク JAHD Network from 日本動物遺伝病ネットワーク:JAHD Network

愛犬が股関節形成不全になる可能性についての診断は「日本動物遺伝病ネットワーク:JAHD Network」が日本で唯一実施しています。日本動物遺伝病ネットワークは、動物病院での検査結果を受け、股関節形成不全の診断・登録をする機関です。

股関節形成不全の検査(レントゲン撮影)を行うにあたって、JAHD Network指定の動物病院はありませんのでかかりつけの動物病院などを利用することになります。

JAHD Networkで実施しているのは、股関節形成不全を客観的に診断し評価することであり、基本的に治療目的で使用されるよりもブリーディングや今後の股関節形成不全の可能性について知るために使用されます。

 

股関節形成不全の評価検査の詳しい流れをみてみましょう。

股関節形成不全検査の流れと注意点

股関節形成不全検査

「飼い主が動物病院にJAHDに沿った股関節形成不全検査を依頼し、飼い主がJAHDに書類を送る」これが股関節形成不全検査の基本的な流れです。

股関節形成不全検査を動物病院で行う際の注意点

股関節形成不全の検査はJAHD Networkが定めた方法があり、その方法に従って行わないと診断ができません。そのため、動物病院には、レントゲンの撮影法と膝蓋骨脱臼の診断法を書面で依頼する必要があるそうです。

かかりつけの動物病院で股関節形成不全の検査ができるのか

一般的な動物病院であればレントゲン撮影は可能なところが多いですが、大型犬の場合はレントゲン撮影の保定のために看護師さんの数が必要になりますので、かかりつけの動物病院で可能かどうか聞いてみるといいでしょう。

JAHD Networkが定めた方法に沿って実施する必要があることから、動物病院によっては通常のレントゲン撮影よりも保定人数を多くする場合があります。

ブリーダー補助

ブリーダーさんによって股関節形成不全の検査支援は異なってくると思いますが、セナが産まれたブリーダーでは、今後のブリーディングのために股関節形成不全の検査を推奨しています。犬が1歳になったのち1歳半迄の間に動物病院で検査を行い、その情報を共有すればJAHD申請料金3,000円を負担してくれます。動物病院でのレントゲンなどの検査費用は飼い主負担です。

 

JAHDでの股関節形成不全の検査結果では、股関節評価ポイントという方法で表示されます。ブリーダーさんの親犬などにこの股関節評価ポイントが表示されている場合もありますので、次は股関節評価ポイントを確認しておきましょう。

股関節評価ポイントと股関節形成不全の関係

股関節評価ポイントの例を、セナの父犬と母犬の股関節ランクで示したいと思います。

ゴールデン・レトリーバー セナの父犬 股関節数値公開情報

プレジールケンネル フラン 股関節

ゴールデン・レトリーバー セナの母犬  股関節数値公開情報
プレジールケンネル れもん 股関節

Bランク(9・9)と書かれているのが股関節評価ポイントです。左右の股関節、それぞれ判定されます。

数値が低い方が優良です。

股関節評価ポイントは、股関節形成不全の確率を示したもので、下記グラフのような関係性になっています。( 股関節形成不全の評価ポイントについて)

股関節系不全 ポイント

評価ポイントが示す関節炎の確率

片側ポイント 見解
2~3 明らかに関節炎ではない確率は約90%、グレーゾーンは10%
4~5 明らかに関節炎ではない確率は約60%、グレーゾーンは40%
6~7 明らかに関節炎ではない確率は約20%、グレーゾーンは75%、明らかな関節炎である確率は5%
8~9 明らかに関節炎ではない確率は約6%、グレーゾーンは77%、明らかな関節炎である確率は17%
10~11 明らかな関節炎である確率は約40%、グレーゾーンは60%
12~13 明らかな関節炎である確率は約60%、グレーゾーンは40%
16~17 ほぼ間違いなく関節炎です

評価ポイント6以上(片足)で明らかな関節炎である確率が生じます。評価ポイント10以上では、関節炎の兆候が何かしら見られる可能性が高いといえるでしょう。

セナの父犬と母犬の股関節ランクを改めてみてみると、

  • セナの父犬例(9・9):明らかに関節炎ではないと言い切れる確率はたった6%
  • セナの母犬例(5・6):明らかに関節炎ではないと言い切れる確率は20%と60%(左右別)

母犬の股関節評価は比較的良好です。父犬の股関節評価はあまり良いとはいえないように見えますが、セナの出身ブリーダーでは、一応11以下であれば通常ブリーディング、スコア12-13の場合には良いスコアの犬と掛け合わせる、14以上のスコアであればブリーディングしないとのこと。

セナの出身ブリーダーにおける股関節ランク表示でAやBとランク分けされているのは、ヨーロッパのFCI基準が元になっており、FCI基準では11スコアまではほぼ正常な関節という評価なのでこの基準を採用しているようです。

股関節形成不全FCI評価内容

FCI評価 股関節形成不全の評価内容 JAHD評価ポイント
「A」 関節形成不全症の兆候なし 0~4
「B」 ほぼ正常な関節 5~11
「C」 軽度の関節形成不全症 12~15
「D」 中度の関節形成不全症 16~20
「E」 重度の関節形成不全症 21~45

ヨーロッパの他に、アメリカの股関節形成不全不全検査、OFA診断などもあります。

 

ここまで、股関節形成不全とは何か、股関節形成不全の主な症状、股関節形成不全検査における評価スコアについて確認してきましたが、海外と比べて日本国内で股関節形成不全の犬の割合がどの程度なのか見てみましょう。

犬が一旦股関節形成不全になってしまうと、運動制限や投薬などの温存療法か、外科的治療をしていく必要があります。

 
 

日本で股関節形成不全の割合はどのくらい?

家庭犬の実態調査

股関節形成不全検査をする機関「日本動物遺伝病」の発表によれば、家庭犬のゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバーを対象にした股関節形成不全の罹患率の実態調査を行ったところ、46.7 %の犬に股関節形成不全が認められたという結果が得られました。

実に約半数の家庭犬レトリバーが股関節形成不全を患っていることを示しています。2001年と少し前の調査であり、現在は多少改善しているかもしれませんが、股関節形成不全への対策は大きく変わっていないことを考えると劇的に良い方向へ変わっているとは考え難いでしょう。

実態調査で得られた股関節形成不全罹患率46.7%という数値は、欧米諸国と比較しても非常に高いです。

日本と欧米諸国における股関節形成不全罹患率の比較

股関節形成不全の割合比較

日本での股関節形成不全の疾患率46.7%がいかに高いかが分かります。日本で股関節形成不全のレトリーバーがなぜこんなにも多いかというと

  • ブリーダーの質
  • 店頭生態販売の問題
  • 一般検査体制確立の遅れ

という理由があげられます。

股関節形成不全を減らすためにお迎えする側としてできることは、ペットショップなどの店頭生態販売を避けること、ブリーダーとはいっても質のいいブリーダーから迎えることなどでしょうか。

股関節形成不全のまとめ

ゴールデン・レトリーバーの里親

これから犬をお迎えしようと考えている場合には、前述のように質のいいブリーダーからお迎えすることで愛犬の股関節形成不全の可能性を減らすことが可能になり、愛犬に限らず今後将来的にも股関節形成不全になる子を減らす事に少しでも貢献できるのかなと思います。

股関節形成不全をはじめとした遺伝的疾患を防ぐ最も有効な方法が、股関節形成不全のリスクが少ない母犬・父犬を交配させることです。子犬を迎える際には、両親犬の股関節ランクなどを確認すると良いでしょう。

それでも、レトリーバーという犬種自体が股関節形成不全になりやすいという遺伝的疾患をもっていますので、股関節形成不全になる確率はゼロにはできません。もし、股関節形成不全の症状が見られた場合には早めにレントゲン検査で状態を知ることで、気をつけながら生活することもできます。

ゴールデン・レトリーバー セナ

当記事内でも記載したJAHDによる股関節形成不全検査の評価ランクについては、今の日本ではどちらかといえばブリーダー側の話です。ブリーディングをしない家庭犬としては、評価ランクまでは必要ではなくもし症状が出たら検査をするというのが一般的でしょう。

股関節形成不全検査の評価ランクを出すことでブリーダーへの情報提供はできますので、もし信頼できるブリーダーであると感じた場合には情報提供をかねて検査をすれば今後のレトリーバーブリーディングに役に立つともいえそうです。

飼い主として愛犬の股関節形成不全の評価ランクを知ることは、症状がでていなくともより予防意識を高めることにもなますが、検査をせずとも愛犬の股関節に負担なるようなことを避けて生活する予防意識をもっていることが大事なのかなという気がします。ただ、評価検査によって将来的に股関節形成不全の発症確率の高い予備軍とわかれば通常よりも更に気をつけて生活することができるので、どこまでするべきか動物病院の獣医師や飼い主さんの考えによって意見の分かれるところだと思います。

飼い主ができることはまずはこうして股関節形成不全についての知識を持ち、愛犬の観察を日々していくことなのでしょう。

追記:犬の股関節形成不全の予防

大型犬の子犬

2012年に発表された犬の股関節形成不全ノルウェーの研究(ニューファンドランド,ラブラドールレトリーバー,レオンベルガーおよびアイリッシュウルフハウンドを対象とした調査)で、興味深いことがわかりました。

遺伝子要因70%・環境要因30%といわれる犬の股関節形成不全の発症要因ですが、環境要因について子犬、特に生後3ヶ月までの生活環境が股関節形成不全の発症に大きな影響を及ぼしているという研究結果が発表されました。

生後2ヶ月まで過ごすブリーダーの環境によっても発症率に差があることがわかり、農場や小さな農地に住むブリーダーの家で育った犬は、股関節形成不全を発達させるリスクがより低いことが分かりました。

更に、生後2ヶ月で新しい家族に引き取られた後の環境でも股関節形成不全を発症リスクが変わることがわかりました。

生後2ヶ月から生後3ヶ月まで公園で毎日運動をする機会を持つことで発症リスクを下げることが可能になり、反対に生後3ヶ月までの間に毎日階段を使うことが発症リスクを増加させていることが分かりました。

つまり生後3ヶ月までの間にブリーダーでも家庭でも、階段などで子犬の関節に負担をかけずに自然のある環境・自然の地形(農場や公園)で過ごす事で、将来的に股関節形成不全の発症をリスクを下げることが研究によって示されました。


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