ビクタスSMTクリームとヒビクス軟膏の違い・共通点・購入先について
犬の皮膚炎治療の過程で使うことになったビクタスSMTクリームとヒビクス軟膏について書いた記事です。
そして、皮膚炎の原因として多い細菌真菌感染の時によく処方されるのがビクタスSMTクリームといわれています。
実際にゴールデン・レトリーバーセナの皮膚炎にも処方されましたし、皮膚炎の診察で複数の獣医師の方に診てもらいましたが、かなりメジャーな軟膏という感じです。
ちょっとした虫刺されでも掻き壊して悪化することで細菌感染を起こしてしまうこともあります。
夏の蒸れなどでも細菌感染を起こしてしまうことがあります。
皮膚炎は犬にとってかなり身近な疾患な上に悪化させると厄介な疾患ですので、飼い主も愛犬に使う薬について知っておいたほうがより良い治療につながるのではないかと思い、ビクタスSMTクリームとヒビクス軟膏について詳しくまとめることにしました。
ちなみに犬の皮膚炎治療では、細菌治療は一つの方法にすぎません。もし軟膏で治らない場合はその軟膏で治らない感染なのか、アレルギーなのかなどを疑っていく必要があります。
犬の皮膚炎で疑う原因
犬の皮膚炎治療では細菌真菌感染の有無の確認・治療を行いその後アレルギーやアトピー性皮膚炎その他の皮膚炎を疑っていくというの基本的な治療順序があります。
最初に確認しておきたいのは犬が皮膚炎を起こしている時に原因は大きく5つです。(獣医師談)
- 細菌感染
- 真菌感染
- 食物アレルギー
- アトピー(環境アレルギー)
- 内部疾患
まずは、ビクタスSMTクリームについて確認したのち、その後通販でも購入可能な皮膚炎治療薬のヒビクス軟膏について書いていきたいと思います。
目次
ビクタスSMTクリームについて
動物病院で処方されるビクタスSMTクリーム
ビクタスSMTクリームは動物病院で処方される、動物用軟膏薬です。
ビクタスSMTクリームに含まれている抗生物質は、犬の皮膚炎治療で使う抗生物質の中では、最もベーシックな部類の抗生物質ということもありよく処方される軟膏だと言われています。
ビクタスSMTクリーム 抗生物質の軟膏
ゴールデン・レトリーバーセナの指間炎治療の際、動物病院で処方された軟膏がビクタスSMTクリームでした
犬の皮膚炎治療によく処方されるビクタスSMTクリームですが、どんな菌に効くのか、どのような成分が含まれているのか確認したいと思います。
ビクタスSMTクリームの概要
適応症 | 対象:犬、猫 細菌性および真菌性外耳炎 細菌性および真菌性皮膚感染症 |
---|---|
組成 |
|
有効菌種 | スタフィロコッカス属菌 ストレプトコッカス属菌 シュードモナス属菌 大腸菌 マラセチア・パチデルマチス 皮膚糸状菌 |
使用上の 注意点 | 8日以上連続使用しないこと |
使用回数 | 1日1回患部に塗る |
製造販売 | ビクタスSMTクリーム:DSファーマアニマルヘルス株式会社 |
ビクタスSMTクリームは細菌にも真菌にも効果があることがわかります。
ただ、〜菌に効くといわれても、皮膚炎を引き起こしている細菌の種類は見ただけでは分かりません。
獣医師においても同じで、例えば経験則から犬の皮膚炎症状をみてマラセチア皮膚炎だろうと推測することは出来ても、細菌検査をして初めてどの菌種が原因菌となっているかを明らかに特定することができます。
参考
本来なら、細菌検査→抗生物質処方が間違いなく薬の効き目を発揮させる方法ですが、細菌検査をしない動物病院が多いのも事実です。
皮膚炎の細菌検査とは。ゴールデン・レトリーバーセナが受けた細菌検査に関する記事:『指間炎の原因を探る。(1)細菌・真菌感染の検査[犬の皮膚炎]』
ビクタスクリームの処方傾向と有効成分
処方傾向
細菌が特定されていない段階で処方されることが多いのが、ビクタスSMTクリームでもあります。
(特定されてから処方されることももちろんあります)
なぜなら、
ビクタスSMTクリームは、広範囲の『細菌』『真菌』の両方に効くからです。
ビクタスSMTクリームは、有効菌種に「マラセチア・パチデルマチス、皮膚糸状菌」と表記がある様に、
細菌だけでなくマラセチアなどの真菌にも効きます。
当然ですが、細菌だけに効く抗生物質では真菌は倒せませんし、抗真菌薬では細菌類を殺すことはできません。
そのために、細菌検査をして使う抗生物質を決めていく必要があります。
でも前述のように、細かい細菌検査を行わない動物病院も実際にはあって、『細菌』『真菌』の広範囲に効くビクタスSMTクリームのような軟膏が重宝されるというわけです。
細菌および真菌に効くというビクタスSMTクリームの有効成分を見てみましょう。
ビクタスSMTクリーム(100g中) 有効成分
有効成分 | 有効細菌 効能 |
---|---|
オルビフロキサシン 1.0g | 【細菌】 グラム陽性菌及びグラム陰性菌の広範囲な菌種に対して殺菌的に作用。 オルビフロキサシンに対する自然耐性菌の出現頻度は低い。 |
ミコナゾール 硝酸塩 1.0g | 【真菌】 強い抗真菌作用を示す。また、抗真菌作用はナイスタチンよりも優れ、ナイスタチン低感受性株にも良好な抗真菌作用。 |
トリアムシノロン アセトニド 0.1g | 【ステロイド】 グルココルチコイドに属し、優れた糖質代謝作用を有し、抗炎症・抗アレルギ一作用を発揮する一方、鉱質代謝作用が比較的弱いことが認められている。 |
上記のようにビクタスSMTクリームの有効成分は3種類
(1)細菌に効く成分
(2)真菌に効く成分
(3)抗炎症剤としてステロイド
が含まれています。
細菌および真菌に効き
さらには炎症止めのステロイドまで含まれているビクタスSMTクリームは、皮膚炎の最初の段階で処方することが多い様です。
もしくは、細菌検査結果がでるまでの炎症止めの様な形で使う場合もある様です。(もちろん、適正な検査の後に使用する場合もありますが)
動物病院の獣医師にとって、ビクタスSMTクリームは良くも悪くも便利な抗生物質・抗真菌薬の動物用軟膏というわけです。
ビクタスSMTクリームに含まれるステロイド
ビクタスSMTクリームには少量のステロイドが含まれているので、抗炎症作用・かゆみ止めの作用もあります。
獣医師に伺うと、ビクタスSMTクリームのステロイドは含有量がそこまで多くはないので、1週間程度の使用なら特に気にしなくて大丈夫でしょうとのことでした。
ビクタスSMTクリームトリアムシノロン アセトニドというステロイド成分は、ステロイドの中でも皮膚内に吸収される量が少なくて済む種類のものだそうです。
次は、ビクタスSMTクリームの実際の効き目について。
ビクタスSMTクリームの実際の効き目
効き目
前述にも書いていますが、ビクタスSMTクリームはセナの指間炎に処方された軟膏です。
効き目はよかったです。
ちろん指間炎や皮膚炎は根本を治していかないと完治しないため、一定期間塗ったからといって、その場の症状を抑えるにすぎませんが悪循環をストップさせるためにはある程度有効でした。
ビクタスSMTクリームは塗りやすい?
ビクタスSMTクリームはのびがよく塗りやすいお薬という特徴もあります。
これまで処方された動物病院で軟膏の中では、べたつかず浸透が早く抜群に使いやすかったです。
べたつきにくいのでビクタスを塗った後に犬が患部を気にしずらいのも良い点です。
ビクタスSMTクリームが処方された時の詳しい動物病院診療内容の記事:指間炎の原因を探る。(3)耐性菌、その後の治療[犬の皮膚炎] 指間炎の原因を探る。(3)耐性菌、その後の治療[犬の皮膚炎] ゴールデン・レトリーバー セナの指間炎・包皮炎などの皮膚炎を治すために、動物病院を変えたのは1歳3ヶ月(2016年3月)のこと。 抗生物質 ...
指間炎の原因を探る。(3)耐性菌、その後の治療[犬の皮膚炎]
ビクタスSMTクリームはどこで買えるのか
ビクタスSMTクリームは動物病院専売品
広範囲の細菌・真菌に効いて塗りやすいということもあり評判の良いビクタスSMTクリームですが、市販はしていません。
ビクタスSMTクリームは、動物病院専売品です。
動物病院でのビクタスSMTクリームの価格は、1本5g 2,160円でした。
ビクタスSMTクリームと同じ様に、細菌・真菌が起因している皮膚炎治療薬で、ヒビクス軟膏というものがあります。
次は、そのヒビクス軟膏について確認したいと思います。
ヒビクス軟膏について
ビクタスSMTクリームの代替品としてのヒビクス軟膏
ヒビクス軟膏もビクタスSMTクリームと同様、動物病院の処方箋薬であることに変わりはないのですが、ヒビクス軟膏は通販で購入できます。
個人でも購入可能なヒビクス軟膏
ヒビクスとビクタス、製薬会社が異なります。
- ビクタスSMTクリーム:DSファーマアニマルヘルス株式会社
- ヒビクス軟膏:フジタ製薬株式会社
ヒビクス軟膏の製造販売元であるフジタ製薬は犬の皮膚炎薬用シャンプー(酢酸クロルヘキシジンシャンプー)で有名な製薬会社です。ヒビクス同様Amazonベストセラーにもなっています。
通販で購入できることから犬の皮膚炎で悩むオーナーにとっては助かることもあるヒビクス軟膏ではありますが、処方薬として開発されていますので概要及び有効成分をしっかり確認しておきたいと思います。
まずは、ヒビクス軟膏の概要です。
ヒビクス軟膏の概要
適応症 | 犬・猫 急性・慢性湿疹 外耳炎 細菌性・真菌性皮膚炎 |
---|---|
組成 | 本剤1mL中 チオストレプトン…2,500単位 ナイスタチン………100,000単位 フラジオマイシン硫酸塩…2.5mg(力価) トリアムシノロンアセトニド…1.0mg |
使用上の注意点 | クッシング症候群が疑われる場合は使用しないこと |
使用回数 | 症状に応じて患部に1日1~3回塗布 |
注意事項 | 長期使用は避ける |
製造販売 | ヒビクス軟膏:フジタ製薬株式会社 |
概要はビクタスSMTクリームと大きく変わりません。
違いといえば、ビクタスの使用回数は1日1回ですが、ヒビクスは1日1回〜3回塗布です。
塗布回数の違いから、ビクタスの方が有効成分が強い可能性、もしくは有効成分が皮膚に留まる時間の違いが考えられます。
では、ヒビクス軟膏に入っている有効成分はどのようなものがあるのでしょうか。
ヒビクス軟膏1ml中 有効成分4種の詳細
有効成分 | 有効細菌 | ビクタスに含まれている成分 |
---|---|---|
チオストレプトン 2500単位※ | 【細菌】グラム陽性菌群に対して高い抗菌活性を示す | × |
ナイスタチン 100000単位 | 【真菌】Candida (Monilia) albicansによる皮膚感染に対して十分な抗真菌作用を示します。 また、in vitroにおいて酵母や酵母様真菌(動物に対して病原性を示す真菌も含む)に対しても静真菌作用を示します。 | × |
硫酸フラジオマイシン 2.5mg(力価) | 【細菌】グラム陽性及び陰性菌に対して広い抗菌スペクトルを有する抗生物質 | × |
トリアムシノロンアセニド 1.0mg | 【ステロイド】合成副腎皮質ホルモンの一つで、抗炎症作用(はれ、痒み、痛みを抑える作用)が強い。局所への投与により、速やかに効果を現し、長時間持続するので、炎症、浮腫、痒みを迅速に和らげ、治癒転帰を促進 | ○ |
※単位とは、容量を図る際の数え方(units)
以上がヒビクス軟膏に含まれている有効成分です。
軟膏の色は黄色っぽくベトっとします。ビクタスSMTクリームと異なり毛がある部分にはつけにくいです。
ヒビクス軟膏が購入できる通販サイト
ビクタスSMTクリームは通販で購入できない医薬品でしたが、ヒビクスは通販で購入することができます。
通販で購入できるか否かは製薬会社の意向もあると思われますが、薬の強さが動物病院専売品か個人購入可能かの一つのラインとも捉えられます。
通販での医薬品販売ではレビューを投稿できない決まりの為、Amazonでも楽天市場でも製品レビューはほぼありませんが、ヒビクス軟膏は犬の痒み止め用品Amazonベストセラーにもなっています。
では最後にビクタスSMTクリームとヒビクス軟膏の共通点と違いをまとめたいと思います。
ビクタスSMTクリームとヒビクス軟膏の共通点と違い
ビクタスSMTクリームとヒビクス軟膏をそれぞれ詳しく確認してきましたが、
最後にビクタスSMTクリームとヒビクス軟膏に共通していること、そして違いについて下記にまとめました。
ビクタスSMTクリームとヒビクス軟膏の共通点と違い
- ビクタスSMTクリームとヒビクス軟膏は同じステロイド成分が含まれている
- (1ml=1gとすれば)ビクタスSMTクリームとヒビクス軟膏のステロイドの強さは同じ
- ビクタスSMTクリームとヒビクス軟膏は細菌・真菌に効く
- ビクタスの方が細菌に対する有効成分が強い
- ただし、細菌・真菌に効く有効成分は全く異る
- テクスチャ(つけ心地)は全く異なる
- ビクタスSMTクリーム:白色のクリーム状で肌馴染みが良い
- ヒビクス軟膏:黄色状の軟膏でべたつきやすい
- ビクタスSMTクリームは通販で買えない
- ヒビクス軟膏は通販で買える
ビクタスSMTクリームとヒビクス共通の注意点
ビクタスSMTクリームもヒビクス軟膏も細菌真菌に効くためとても便利な軟膏ですが、原因菌がわからない中で使用し続けると耐性菌を生み出しかねない可能性もあります。
個人で購入し犬に使う場合はその点も注意しなければいけません。