下痢下血に処方された漢方薬[犬の漢方]
この記事はゴールデン・レトリーバーセナに処方された具体的な漢方薬の記事です。
昨年10月より繰り返し下痢が続き、もう3ヶ月経ちました。
自分自身でも漢方の知識を深めたいと思い
下痢治療の中で処方されている漢方薬についてまとめることにしました。
この記事に書いている漢方「理中丸」「五苓散」「葛根湯」「黄連解毒丸」「ガイヨウ」は全て下痢に処方された漢方薬です。
服用量は漢方医から指示を受けたものであくまでセナ(体重28kg)の場合です。同じ体重でも症状によって処方量は異なります。
目次
理中丸(りちゅうがん)とは
理中丸の特徴
体力虚弱で,疲れやすくて手足などが冷えやすい
胃腸虚弱,下痢,嘔吐,胃痛,腹痛,急・慢性胃炎に
人参湯とも。
含まれている生薬
以下の割合で混合
ニンジン(人参) 3g | 健胃整腸、鎮痛 |
カンゾウ(甘草) 3g | 諸々の急迫症状を緩和 鎮痛、鎮痙 解毒、鎮咳、抗炎症 アレルギー症状の緩和 |
ビャクジュツ(白朮) 3g | 健胃、整腸、 利尿、止瀉 |
カンキョウ(乾姜) 3g | 嘔吐、咳、下痢、 冷え、腹部の疼痛 |
セナの場合
4歳の時に初めて漢方を飲んだ際には、身体がかなり弱っているといわれ主に理中丸が処方されました。胃腸の中でも特に小腸機能の回復に良いそうです。
服用量
1回30丸 1日2回
参考:ウチダの理中丸
五苓散(ごれいさん)とは
五苓散の特徴
吐き気を伴う下痢に
体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:
水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔
注)しぶり腹とは、残便感があり、くり返し腹痛を伴う便意を催すもののこと
含まれている生薬
以下の割合で配合
タクシャ(沢瀉)3.30g | 健胃整腸、鎮痛 |
ソウジュツ(蒼朮)1.98g | 健胃整腸、利尿、発汗 |
チョレイ(猪苓)1.98g | 利尿 |
ブクリョウ(茯苓)1.98g | 利尿、健脾 滋養、鎮静 |
ケイヒ(桂皮)1.32g | 健胃、発汗、 解熱、鎮痛、整腸 |
こんな症状に
下痢に処方されている五苓散ですが、なぜ下痢に良いかというと五苓散に含まれている生薬の「沢瀉、蒼朮、茯苓」が体内の水分バランスを整えてくれるからだそうです。
水分を適切に処理し水分代謝を良くするため、むくみの改善や二日酔いの改善にも効果的な漢方です。
利水作用があります。
尿量
五苓散では尿量が少ない時にも使われるそうです。(漢方では尿の減少は一つの症状で体内の水分代謝がうまくいっていないと捉え、下痢も同様に水分代謝の問題があると捉える)
一方でむやみに尿量が増えることもなく、体内の水分が足りなければ抗利尿として働きます。
以上のように体内の水分の偏りを調整するのが五苓散の特徴です。
雨の日に具合が悪くなる
水分代謝がうまくいっていない水毒(水滞)症状にある場合は、体内で水分が偏っていることを意味しており、体調が「天候に左右されやすい」そうです。低気圧がやってくる雨の日に具合が悪くなる場合も、水分代謝を改善させる五苓散が効果的なことがあるそうです。(人の場合は低気圧の頭痛に効くことも多いとか)
セナの場合
喉が渇いてよく水を飲むのに尿量が少ないという場合によく効くそうなのですが、口渇・尿量減少はセナにはみられません。
またセナも天候の影響を受けやすいのでは?というのが先生の見立てです。
4歳秋〜5歳冬の下痢への処方は、理中丸より次に五苓散が主となっています。
服用量
ツムラの五苓散顆粒の場合:1日2回 1回あたりスプーンすりきり2杯
クラシエ錠剤の場合:1日2回 1回4錠
参考:ツムラの五苓散
黄連解毒丸(おうれんげどくがん)とは
黄連解毒丸の特徴
その名の通り解毒の役割を持つ漢方。
のぼせぎみでいらいらして落ち着かない傾向があり、鼻出血、不眠症、神経症、胃炎、二日酔、血の道症、めまい、動悸、更年期障害、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎の症状がある場合に。
熱をとり体を冷やす漢方。皮膚炎の抗炎症、アトピー性皮膚炎にも。
胃腸をも冷やすため胃腸の弱い人(犬)には向かず、体力のある人(犬)向け
含まれている生薬
以下の割合で配合
オウレン(黄連)1.5g | 消炎、止血、精神安定 |
オウバク(黄柏)1.5g | 消炎、健胃、止瀉 |
オウゴン(黄芩)3g | 抗菌作用、解熱、利尿、抗アレルギー、解毒作用、肝機能の活性化 |
サンシシ(山梔子)2g | 清熱、消炎、精神安定 |
セナの場合
効能には下痢とは書かれていませんが、配合されている生薬に抗炎症および抗菌作用、止瀉作用があることから下痢に処方されました。
ただし副作用も少なからずあり、食欲低下なども起こるとのことで長期服用は向かないようです。
服用量
1回30丸 1日1回
参考:ウチダの黄連解毒丸
葛根湯とは
葛根湯の特徴
「風邪のひきはじめや肩こりに葛根湯」といわれますが葛根湯には体を温め、炎症や筋肉を和らげる効果があります
含まれている生薬
カッコン(葛根)2.68g | 鎮痛、解熱、 鎮痙 |
マオウ(麻黄)2.01g | 発汗、鎮痛、鎮咳、去痰、利尿 |
タイソウ(大棗)2.01g | 強壮、利尿、矯味 生薬の調整 |
シャクヤク(芍薬)1.34g | 鎮痛・鎮痙、収れん、緩和 |
カンゾウ(甘草)1.34g | 諸々の急迫症状を緩和 鎮痛、鎮痙 解毒、鎮咳 抗炎症、アレルギー症状の緩和 |
ショウキョウ(生姜)1.34g | 健胃、食欲増進、発汗 |
ケイヒ(桂皮)1.34g | 健胃、発汗、 解熱、鎮痛、整腸 |
セナの場合
下痢に葛根湯とはあまり聞いたことがありませんが、直接的に下痢を止める作用があるわけではなくて、体温を上げて体の巡りをよくするのが目的だそうです。
服用量
1日2回 1回8錠
下痢を繰り返して3ヶ月経ってから飲むようにと指示があった葛根湯。1回あたりの量は大人の2倍の量を指示されています。
参考:ツムラの葛根湯
ガイヨウ(よもぎ)とは
艾葉(ガイヨウ)の特徴
ガイヨウはよもぎのこと。
経を温め、血を止める効果
セナの場合
下痢をした時に血便まですることがよくあるので、その時に「ヨモギ」をあげるように指示がありました。
服用量
毎食粉末をひとつまみ
まとめ
漢方の難しさ
1年前の3歳秋から4歳冬にかけても下痢に悩まされましたが、今年も同じように下痢を繰り返しています。
漢方をもってしてもなかなか治りません。
下痢止めの漢方といえば理中丸、五苓散。
五苓散は特に水の巡りをよくする漢方です。
先生からの漢方の処方で、「えっこれをあげるんだ?」とか「前回と同じ症状に見えるのに違う漢方なんだ・・・」と思うことはよくあり、その都度調べてみるのですが漢方って難しいなと思います。理中丸と五苓散もそうです。
下痢は下痢でも、なぜ今回は五苓散??とか。
分からないことは出来るだけ聞くようにしているのですが忙しい先生なので自分である程度調べないと知識が追いつきません。知識なくしては質問も表面的になってしまうので、なんとか漢方を理解しようとしています。
西洋薬ですと割と症状と薬が結びついているので覚えやすいのですが、漢方は表面的な症状よりも原因に対して処方するので奥が深いです。
最後に驚いた処方を一つ。
こんな処方も
これまで一番驚いた処方は「便秘薬を少量あげて」といわれたことです。
下痢なのに便秘薬!?
もっと下痢になるんじゃない?というのが最初の感想でしたが
理由は「ごく少量であれば脾臓肝臓の働きをよくして腸の動きを整える」そうです。
配合されている生薬をよくわかっていればそういう処方の仕方もできるわけですよね。
確かに便秘も下痢も腸がうまく働いていないわけで、理由を聞いて納得しました。
原因療法としての漢方。
漢方薬や生薬となると難しく感じますが、セナの体調が少しでも安定するように薬膳などで取り入れられるようになれればいいなと思います。