抗生物質フラジールの処方
( 1 )クロストリジウム菌
[犬のIBD]
この記事は、4歳になるまでの数ヶ月間下痢と嘔吐の頻度が多くなり動物病院にかかったときの治療記録です。
2歳4ヶ月(2017年4月)に手作り食にしてからは良いウンチをすることの方が多くなり
お腹を壊す頻度が減ってきていました。
以前よりはお腹の調子がよくなっているものだと思っていました。
しかし、3歳8ヶ月(2018年8月)からの3ヶ月間は、毎月のように下痢と嘔吐をしていました。
1週間程度かけて一旦は治るのですが、また約1ヶ月後には粘液便・下痢・嘔吐となるのです。
だんだんとこれはおかしいかもと思いはじめていました。
しかも3歳10ヶ月(2018年10月)には連日で嘔吐をして血便まで。
下痢や嘔吐に他の病気が隠れていたら大変と思い、繰り返す下痢と嘔吐について改めて動物病院で診察してもらうことにしました。
「繰り返す下痢」動物病院での診察内容
今回かかった動物病院の獣医師は、別の動物病院で勧められたこともあり訪れることにしました。
「健康な犬はお腹を壊さない」という考えをお持ちの獣医師でした。
これまでかかった動物病院では「季節の変わり目は犬だってお腹を壊す」という様に聞いていたので、最初はびっくりしましたが「健康な犬は季節の変わり目にもお腹を壊さない」と断言されました。
この獣医師の先生いわく犬がお腹を壊すのは「何かを拾い食いした」とか「食事が合わなかった時くらい」だそうです。
ちょっと極論かな・・・と思ったのですが、確かに年に1回もお腹を壊さない子というも耳にはしますし、それがあるべき姿だといわれればそうな気もします。
繰り返す下痢ならまずは療法食
繰り返す下痢の場合、まずは消化の良いドッグフードを変えるか療法食にする。
あげるドッグフードは。低脂肪食や加水分解フードなどの療法食。
ただセナはアレルギーもあり既に手作り食にしているので、食事は変えられないねと言われました。
検便(直接法)
便は持参していなかったので、直接法で検便をしました。
動物病院の顕微鏡で見た結果、
クロストリジウム菌が多い。とのこと。
他に寄生虫の卵など異常は見つかりませんでした。
検便で見つかったクロストリジウム 菌とは一体何なのでしょうか。
クロストリジウム菌とは
クロストリジウム菌(クロストリジウム ディフィシル )は、正常な腸内にも存在し土壌内にもいる菌で特別にどこかで感染した細菌ではありません。
クロストリジウム菌
クロストリジウム菌という腸内細菌は、100種類ほどありクロストリジウム菌には良い菌もいれば悪い菌もいます。悪玉菌のクロストリジウム菌が増えると腸内で処理できる毒素の量を超えてしまい下痢を引き起こすそうです。
クロストリジウム菌の中でも増殖することで下痢の原因となる代表的な菌は、クロストリジウム・ディフィシル(Clostidium difficile)という菌です。
なぜクロストリジウム菌が増えるのか
悪玉菌のクロストリジウム菌が増える理由は、抗生物質の投与や免疫調整機能の欠如などが原因で腸内フローラのバランスが崩れるからだそうです。
この時、セナは抗生物質を服用していたわけではなかったので、獣医師は免疫調整の欠如があるのではと考えた様です。
そこで処方されたのが、抗生物質でした。
繰り返す下痢に処方された抗生物質
処方された抗生物質は、フラジールというお薬。
まず処方されたのは1週間半。
(次の来院予定が1週間半後だったため)
これまで抗生物質を飲むと必ず下痢をしてきたことや
抗生物質の服用は過去の経験から極力しないように努めていたこともあり
- そもそも抗生物質が必要なのか
- これまで耐性菌が出たことがあるのだけど長期服用によってその心配はないのか
などを聞きました。
獣医師の答え
- 処方するフラジールという抗生物質は、細菌を殺すというよりも免疫調整の目的で処方をしている
- 耐性菌がでる可能性はある
という回答でした。
獣医師はこの段階ですでに慢性腸炎の一種、犬のIBD(炎症性腸疾患)を疑っていて、
抗生物質フラジールを服用していれば下痢をしないのか。
そして抗生物質フラジールをやめたら下痢をするのか。
を観察した方がいいとのことで服用に至りました。
抗生物質の服用をためらう気持ちはかなりありましたが、飲まないといけない時もあるだろうと服用を受け入れました。
抗生物質フラジールの概要
抗生物質フラジールは人にも犬にも処方される薬です。
薬名 | フラジール250mg |
---|---|
容量 | 1回1錠1日2回 |
有効成分 | メトロニダゾール250mg |
一般名 | メトロニダゾール錠 |
種類 | 抗菌薬・抗原虫薬 |
適応症 | ジアルジア症 慢性腸炎 炎症性腸疾患(IBD) |
副作用 | 下痢、痒み、おう吐、吐き気、散瞳、発疹、発熱、目の充血、肝臓機能低下、けいれん発作 |
注意 | 肝臓腎臓機能に障害がある場合 |
参考 | フラジール250mgの医薬品ガイド(人用) |
ゴールデン・レトリーバーセナ:体重27.5kg
用量:フラジール250mg 1回1錠1日2回 1週間半
ジアルジア症などの寄生虫駆除のためにも使われるフラジールですが、セナは寄生虫には感染しておらず腸炎の治療のために処方されました。
フラジールは、他の抗生物質が効きにくい嫌気性菌などにも効果があるとされています。
こうして抗生物質フラジールをまずは2週間服用することになりました。
問題は下痢と嘔吐を繰り返すこと
今考えられる下痢と嘔吐の直接的な原因は、クロストリジウム菌の増加。
つまりクロストリジウム感染症です。
クロストリジウム感染症というと大げさな感染症という感じがするのですが、「腸内細菌のバランスが崩れたのでしょう〜」とか「悪玉菌が増えて下痢になったかな」という動物病院での診断の裏には、よくこのクロストリジウム菌の増加があるそう。
犬のクロストリジウム 感染症についてはWEB上の情報は少ないです。治療例:ベルヴェット動物病院
人に関する情報ですが、偽膜性大腸炎とよばれる腸炎があります。偽膜性大腸炎は抗生物質の服用後に腸内細菌のバランスが崩れて、クロストリジウム・ディフィシル(Clostidium difficile)が優位になることで起こる大腸炎です。犬のクロストリジウム症も似たようなもののようですが、犬の方が解明が進んでいません。
詳しい細菌名まで伝える先生が少ないだけで、クロストリジウム菌の増加で犬が下痢をしてしまうこと自体は珍しいことではないのだとか。
クロストリジウム菌が増えても治療をして菌を排出し、元の腸内環境に戻れば問題はありません。
問題なのは、治療をしても下痢と嘔吐を繰り返してしまうことです。
こうして、まずは抗生物質フラジールを服用して様子をみることになったわけですが、他に疾患がないか調べるために詳しい血液検査も行いました。
血液検査の結果と見解 (3歳10ヶ月)