血液検査の結果と見解 (3歳10ヶ月)[犬の健康診断]
3歳10ヶ月、嘔吐・下痢・血便が続いた際に実施した血液検査の結果と獣医師の見解についてまとめた記事です。
基本の血液検査に加えて膵臓機能を測る血液検査も実施しました。
血液検査をした時の動物病院診察記録:抗生物質フラジールの処方( 1 )クロストリジウム菌[犬のIBD]
血液検査の主な確認ポイント
下痢が続くという理由で動物病院を受診したため
基本の血液検査では
臓器の異常ほかに栄養吸収や免疫を示す
- 総蛋白
- アルブミン
- グロブリン
これらの数値に異常が出ていないかを確認するのが主な目的でした。
但し、
IBD(炎症性腸疾患)の重症例では蛋白漏出性腸症を示す場合があるものの
初期段階ではタンパクの数値の低下が見られないことも多いようです。
【蛋白漏出性腸症とは】消化管粘膜から血しょう蛋白(アルブミン、グロブリン、フィブリノゲン)が胃腸管腔へ大量に漏出することにより低タンパク血症を起こす病態
血液検査費用
◇基本の血液検査費用:12,031円
(内訳)
・全血21項目 3,780円
・電解質3項目 864円
・血液生化学検査 6,048円
・血液生化学検査CRP 1,339円
◇膵臓機能の血液検査費用:11,772円
(内訳)
・犬膵特異的リパーゼ(Spec-cPL)定量検査 5,940円
・イヌ血液特殊検査 5,832円
血液検査費用計:23,803円
基本の血液検査の結果
基本の血液検査ができる検査機械が病院内に2つあるという理由で2つの検査結果を受け取りました。
検査機械によって正常か異常かの基準範囲も異なるため両方の数値を参考に判断するようです。
基本の血液検査( 1 )
判定は正常値におさまっています。
項目 | 数値 | 正常範囲 |
---|---|---|
総蛋白 | 6.3 | 5.0〜8.0 g/dL |
血中の蛋白総量を示す 数値高い:脱水・炎症 数値低い:栄養不良・消化吸収不良 | ||
アルブミン | 2.9 | 2.5〜4.4 g/dL |
栄養状態を反映するタンパク 数値高い:脱水 数値低い:栄養不良・漏出 | ||
グロブリン | 3.4 | 2.2〜4.0 g/dL |
免疫に関するタンパク 数値高い:免疫過剰・炎症・腫瘍 |
この判定値への診断は記事後半に書いています。
基本の血液検査( 2 )
低値になっているのは「網赤血球数(RETIC)」の項目です。
項目 | 数値 | 正常範囲 |
---|---|---|
網赤血球数(RETIC) | 8.0 | 10.0〜110.0 K/μL |
貧血の時に新しく血液が作られているかを調べる項目 骨髄造血能(赤血球産生能)を評価する項目 数値高い:脱水・炎症 数値低い:栄養不良・消化吸収不良 |
低値になっているのですが、大きな問題ではないだろうといわれました。
網赤血球数は「補充する側の血液だから」というのが理由で
いま貧血を起こしているというわけではなく、補充側の血液が足りなくなっている状態を示しているようです。
低値が続いたり他の数値と併せて低値の場合に問題視するようです。
2つ目の機械の検査結果でも総蛋白・アルブミン・グロブリンは正常範囲におさまっています。
膵臓機能の血液検査の結果
膵臓機能を測る血液検査は外部委託だったため、後日検査結果を伺いました。
- 消化酵素がでているか否か
- 膵臓の炎症があるか否か
を調べるための血液検査です。
膵臓血液検査の項目は2つあります。
- 犬トリプシン様免疫活性(c-TLI)
- 犬膵特異的リパーゼ(Spec-cPL)
項目 | 結果 | 正常範囲 |
---|---|---|
犬トリプシン様免疫活性 (c-TLI) | 17.6ng/mL | ≧ 5.0 |
犬膵特異的リパーゼ (Spec-cPL) | 30μg/L | ≦ 200 |
検査結果は正常範囲におさまっており
膵臓機能の異常による下痢血便嘔吐ではなさそうです。
犬トリプシン様免疫活性とは
犬トリプシン様免疫物質は、膵外分泌不全で低値になり膵炎で高値となる。
高値:急性膵炎、慢性膵炎の急性憎悪時、膵癌の一部(膵頭部癌>体尾部癌)、膵嚢胞(特に膵仮性嚢胞)、薬物性膵炎、腎不全、胆石症
低値:膵外分泌不全、慢性膵炎の非代償期、膵癌の一部、膵全摘後、インスリン依存性糖尿病
(参考:富士フィルムモノリス株式会社)
犬膵特異的リパーゼとは
膵臓のリパーゼを免疫学的な方法で測定する検査でリパーゼ活性とは異なる。
膵炎の時に高値になる。
膵炎マーカーとしては犬、猫ともに現在もっとも信頼性の高い検査と考えられている。
(参考:株式会社LSIメディスン)
血液検査結果の見解
基本の血液検査と膵臓機能の血液検査を行いましたが
膵臓の消化酵素はでており炎症も起こっていなさそうだということがわかりました。
基本の血液検査結果も
正常値内におさまっているのですが
今は大丈夫でも
今後は総蛋白・アルブミン・グロブリンの数値が下がってくるはず
他の臓器機能に今のところ所見はない
結果的に、炎症性腸疾患の疑いが強いと考えるのが妥当
というのが獣医師の見立てでした。
今は正常値でも安心できない旨を伝えられました。
血液検査結果診断の違い
前述にも書きましたがこの血液検査は下痢や血便をした時におこなったものです。
確かに正常値におさまっています。
しかし、その後症状が改善しないために漢方を処方してくれる動物病院にかかり
その診察の際にこの血液検査の結果をみせたところ
脱水も起こしているし、この時はかなりひどい状態だったね。
といわれました。
獣医師からは正常値だといわれていたし、正直なところ
この血液検査を読み解く力が自身にはないため
「正常値範囲の中で低い数値・高い数値も気になるのですが、問題ないのですか?」
と担当獣医師にお聞きしたら、気にする必要はないといわれ
そのような理解でいたので
漢方の獣医師の方の言葉に驚きを隠せませんでした。
どういうことかといいますと
漢方の獣医師の見解
基本の血液検査にある「ヘモグロビン」の数値が高いこと
ここがポイントだそうです。
項目 | 数値 | 正常範囲 |
---|---|---|
ヘモグロビン | 16.8 | 10.0 ~ 18.8 g/dL |
( 説明) 血液の濃さを示す。赤血球内に含まれる赤い色素。 |
検査結果は正常範囲におさまっていますが確かに高値です。
「ヘモグロビン」の数値が高い、それはつまり血液が濃くなっていることなので
脱水を起こしていると読むようです。
獣医師の先生は他の項目と併せて脱水していたとみていた様で診断理由はもう少し複雑だと思われますが、簡単に伝えるとヘモグロビンの数値が高いことが脱水を表している第一の理由という理解でいます。
つまり血液が濃くなっているということを置き換えて解釈すると
他の項目の数値結果が高めにでてしまっているということを示しています。
そのため、検査結果はそのままの数値ではなくより低値として読まなければならず
そうなってくると
一見正常範囲にみえる数値も実は低値を示している、というわけです。
項目 | 数値 | 正常範囲 |
---|---|---|
アルブミン | 2.9 | 2.5〜4.4 g/dL |
例えばアルブミンの数値も正常範囲におさまっているように見えますが
脱水が起こり血液が濃くなっていることを考慮すると
より低値と読み解き、つまり栄養不良を起こしているという見立てでした。
血液検査結果のまとめ
漢方の獣医師に
脱水も起こしているし、この時はかなりひどい状態だったね。
と言われた時は驚くとともに、
嘔吐下痢血便が続き体重は低下していたし
脱水や栄養不良が起こっていたというのは納得がいきます。
血液検査は正常値・異常値というのがプリントされてでるので
それをそのまま捉えがちですが
獣医師によって血液検査1つとっても診るところが異なるということです。
低値でも大丈夫だといわれた網赤血球数(RETIC)も
その時はやはりその症状を表していたのではないかとも思いました。
獣医師の読み解く力で診断そして治療が変わってしまうこと
詳しい血液検査をしながらも脱水状態に気づいてあげられなかったことに怖さを感じました。
血液検査が正常値にみえても
血液検査が一見正常値でも回復が見られなかったり「本当にそうなの?」という
疑問がある場合はやはりセカンドオピニオンや動物病院を変えるなど
諦めないで意見を聞きにいくことが大切だと感じました。
この血液検査を実施した動物病院は他院で勧められたことや
経験豊富な先生であること、動物病院もかなり混んでいることや
実際に診察を受けた方に話を伺う限りでは良さそうな先生ということ
実際の診察では少々無愛想ながらも説明が丁寧、
聞いたことにきちんと答えてくださる姿勢もあり信頼しても良いのかなと思っていました。
獣医師への信頼というのは時には大事なものですが
「この先生が仰るなら大丈夫だろう」などとバイアスをかけてものをみてしまうことに
気をつけなければと思い知らされた一件でもありました。