ビオフェルミンR錠とビオフェルミンS錠の違い
[犬の下痢対策]

犬の整腸剤としても利用される「ビオフェルミンR錠」と「ビオフェルミンS錠」の違いについてまとめた記事です。
抗生物質を飲むと必ずといって良いほど、軟便になり下痢をするゴールデンレトリーバー セナ。
整腸剤は、ビオフェルミンS錠・ミヤリサンともに自宅に揃えてあります。
今回の記事では、犬にも整腸剤で処方されることの多いビオフェルミン2種類、ビオフェルミンR錠とビオフェルミンS錠の違いについてまとめました。
- 人間用に販売されているビオフェルミンS錠などの整腸剤を犬にあげても大丈夫なのか?については『子犬が軟便・下痢の時、ビオフェルミンなど人間用の整腸剤を飲ませても大丈夫?』に書いています。
目次
ビオフェルミン2種の違い:ビオフェルミンR錠とビオフェルミンS錠
犬が軟便や下痢の時に動物病院で処方されることのあるビオフェルミンS錠・ビオフェルミンR錠。
セナは動物病院でビオフェルミンS錠・ビオフェルミンR錠共に処方されたことがありますが、どんな違いがあるのでしょうか。
- ビオフェルミンS錠:医薬部外品
- ビオフェルミンR錠:医薬品
最も大きな違いは、ビオフェルミンR錠は抗生物質と一緒に摂取しても死滅しない"耐性乳酸菌である"という点です。
ビオフェルミンR錠のRは、耐性菌Antibiotics-Resistantを意味するRです。
1.ビオフェルミンS錠:医薬部外品
ビオフェルミンS錠は薬局などで購入することができます。
一般的に"ビオフェルミン"といったらこちらのS錠です。

ビオフェルミンS錠の乳酸菌3種
乳酸菌成分 | 乳酸菌の働き |
コンク・ビフィズス菌末 | 主に大腸にすみつき、乳酸と酢酸をつくり、整腸効果をたかめます。 |
コンク・フェーカリス菌末 | 主に小腸にすみつき、すばやく増えて乱れた腸内菌叢を整えます。 |
コンク・アシドフィルス菌末 | 主に小腸にすみつき、乳酸を多くつくり、有害菌を抑えます。 |
ビオフェルミンS錠基本の飲み方
効能・効果 | 整腸(便通を整える)、軟便、便秘、腹部膨満感 |
用法・用量 | 15歳以上3錠を1日3回。食後に服用。 |
犬の場合は体重で何錠飲ませるのかを大体割り出して処方されています。
2.ビオフェルミンR錠:医薬品

ビオフェルミンR錠は医薬品のため薬局・通販などで購入することはできません。
動物病院で処方してもらう必要があります。
ビオフェルミンR錠の基本情報
菌種 | 耐性乳酸菌(Antibiotics-Resistant Lactic Acid Bacteriae) |
効能・効果 | 次の抗生物質・化学療法剤投与時の腸内菌叢の異常による諸症状の改善 (ペニシリン系、セファロスポリン系、 アミノグリコシド系、マクロライド系、 テトラサイクリン系、ナリジクス酸) |
用法・用量 | 通常、成人1日3g又は3錠を3回に分割経口投与。なお、年齢、症状により適宜増減する。 食後の服用。空腹は避ける。 |
薬理薬効 | 耐性乳酸菌は各種抗菌剤に高度の耐性を有し、抗菌剤含有培地においても増殖する |
作用機序 | 耐性乳酸菌は抗菌剤存在下においても増殖し、乳酸等を産生することにより腸内菌叢の異常を改善して、整腸作用をあらわす。 |
臨床成績 | 各種抗生物質投与中に下痢を発現した2カ月〜13歳の症例に、 同一抗生物質の投与を続けるとともに本剤を投与した有効率は66.7%である |
副作用 | 本剤は安全性が高く、常用量をこえて長期投与しても副作用があらわれることは少ないと考えられる。 |
抗生物質の非不活性化 | 耐性乳酸菌は抗生物質を不活化しない |
抗菌剤投与時の腸内での増殖性 | 耐性乳酸菌は抗菌剤投与時の腸内においても増殖する |
有害菌の増殖抑制作用 | (1)耐性乳酸菌は緑膿菌、ブドウ球菌、プロテウス等の増殖を抑制する。 (2)耐性乳酸菌は抗菌剤投与時の腸内に出現する真菌、クロストリジウム、クレブシエラ等の増殖を抑制し、腸内菌叢(ちょうないきんそう:腸内菌の集合体を指す)の異常を改善する |
ビオフェルミンR錠は「抗菌剤と一緒に飲んでも増殖可能な耐性乳酸菌」であるという内容がより細かく書いてあります。
整腸剤をあげるタイミング
整腸剤は食後にのむと乳酸菌が胃酸の影響を受けることなく、生きて腸内に届き優れた整腸作用が期待できます。
その為、ビオフェルミンS錠・ビオフェルミンR錠ともに、空腹時を避け犬の食事後が服用するタイミングです。
ビオフェルミンS錠は甘みがあるのでセナはとても喜んで食べます。
抗生物質と整腸剤の関係
【ビオフェルミンS錠の場合】
ビオフェルミンS錠を抗生物質と一緒に飲んでも効果がなく、結局、セナは下痢をしました。
犬に抗生物質とともに整腸剤をあげるにあたって、大事なのが抗生物質と整腸剤の作用関係です。
抗生物質と一般的な整腸剤を一緒に摂取した場合
薬局などでも手に入る医薬部外品のビオフェルミンSは、抗生物質と一緒に服用することは想定されていません。
そのため、ビオフェルミンS錠をはじめとする医薬部外品の整腸剤全般には抗生物質と服用することで、以下の2つのことが起こる可能性があります。
(1)整腸剤が、抗生物質を不活性化させる可能性がある
整腸剤の作用によっては、抗生物質の効き目が減少してしまう場合があります。
(2)抗生物質投与下では、乳酸菌等が死滅してしまう可能性がある
抗生物質を服用している際は、せっかく整腸剤を一緒に摂取しても抗生物質の作用によって、乳酸菌等が死滅してしまい、整腸剤の効果が得られない場合もあるのです。

抗生物質にしても、整腸剤にしても、お互いに効果を半減させる恐れがあるそうです。
犬の体調になんらかの副作用を起こす、というよりも、期待される効果が得られない可能性があるということです。
抗生物質と整腸剤の関係
【ビオフェルミンR錠の場合】
医薬部外品のビオフェルミンS錠は単体で摂取することが前提になっている一方で、
医薬品のビオフェルミンR錠は抗生物質と同時に摂取することが前提になっています。
医薬品のビオフェルミンR錠は、抗生物質投与の下での下痢を回避するための整腸剤です。
抗生物質と同時に摂取することが前提として作られている整腸剤には、2つの特徴があります。
(1)耐性乳酸菌は抗生物質を不活化しない
整腸剤の作用によって、抗生物質の働きを弱めることはしません
(2)抗生物質投与下でも、耐性乳酸菌は増殖できる
耐性乳酸菌は各種抗菌剤に高度の耐性を有し、抗菌剤があっても増殖します
こうやって整腸剤と抗生物質の関係を知ると、医薬部外品のビオフェルミンS錠と抗生物質を一緒に飲んでも下痢を防げなかった理由が分かってきます。
実例として、ールデンレトリーバーセナが下痢をした時、動物病院で受けた実際の処方についても書いておきたいと思います。
抗生物質にビオフェルミンS錠が処方された結果
1歳4ヶ月にゴールデン・レトリーバー セナが下痢をした時のことです。
子犬の時から抗生物質を飲むと必ずといって下痢をしてしまうセナ。
皮膚炎の治療のため3月から通っている動物病院でも、抗生物質で下痢をする旨を伝えてありました。

実際にこんな風に動物病院の院長と話しました。
抗生物質を処方箋で出された時
医師『抗生物質飲むと、お腹緩くなっちゃうんだよね?』
『そうなんです』
医師『自宅に、整腸剤あります?』
『ビオフェルミンとミヤリサン、あります』
医師『じゃあ、ビオフェルミン、一緒にあげてください。
ミヤリサンは、うちではあげたことなくて、分からないからビオフェルミンで。それでも、ダメだったら連絡もらえますか?』
犬の整腸剤に、ビオフェルミンをだすか、ミヤリサンをだすか、はたまた動物用整腸剤のビオイムバスターをだすかは、動物病院や医師の方針によるようです。
そして、抗生物質と一緒にビオフェルミンS錠をあげるも、結局ゴールデン・レトリーバー セナは下痢をしました。
抗生物質とビオフェルミンS錠を飲むも下痢
自宅にあったビオフェルミンS錠を抗生物質と一緒にあげても結局下痢をしてしまい、動物病院に連絡しました。
『ビオフェルミンをあげているのですが、下痢になってしまいました・・・』
医師 『そうか〜ビオフェルミンS錠は、抗生物質と一緒に飲むと、効き目がでないことも多いんですよ。
じゃあ、抗生物質と一緒に服用しても効き目があるといわれている、ビオフェルミンR錠を処方しますね。』
担当医師は、まずは自宅にビオフェルミンS錠があるなら、それで対応してもらおうと考えたようです。
これまで、何度か抗生物質と一緒にビオフェルミンS錠をセナに飲ませたことがありますが、振り返ってみるとビオフェルミンS錠で抗生物質が原因の下痢を回避できたことは記憶にありません。
当たり前といっては何ですが、ビオフェルミンS錠の乳酸菌は抗菌薬の元では死滅するといわれているので、効果がないのも当然なのかもしれません。

抗生物質と飲んでもビオフェルミンS錠が作用する子もいるのかもしれません。
ただ、ゴールデン・レトリーバー セナへの整腸剤効果をみる限りでは、ビオフェルミンS錠は"抗生物質と飲み合わせない時の服用に限る"、です。
ゴールデン・レトリーバーセナには改めてビオフェルミンR錠が処方されました。
ビオフェルミンR錠でも下痢は回復せず。その理由は?
抗生物質と一緒に飲んでも整腸作用が働くといわれているビオフェルミンR錠も、セナの軟便や下痢を止め、改善させることはできませんでした。
う〜ん・・・なんで何も効かないの・・・
そんな風に思っていましたが、セナの下痢にビオフェルミンR錠が効かなかった理由が判明しました。
ビオフェルミンR錠が作用するのは、特定抗生物質6種の元
ビオフェルミンR錠を処方された時には知らなかったのですが、ビオフェルミンRが作用する条件には特定の抗生物質の種類という限定がありました。

ビオフェルミンR錠が死滅せずに作用するのは、ペニシリン系、セファロスポリン系、 アミノグリコシド系、マクロライド系、 テトラサイクリン系、ナリジクス酸の6種抗生物質投与の元です。
他の抗生物質の種類では、明らかな効果が認められていないということです。
今回下痢が激しくなった時、ゴールデン・レトリーバー セナは前述6種以外の抗生物質を服用していました。
ビオフェルミンR錠が効く確率は約70%
そもそもビオフェルミンR錠の有効率、66.7%ですから、約3割の人には効かないことになります。
ビオフェルミンR錠は人用整腸剤なので、犬の臨床結果データはありませんが犬も似たようなものかもしれません。
ビオフェルミンR錠の効果は、抗生物質6種の元という明らかな条件があるのですから、飲み合わせまで考慮した上で整腸剤を処方してこそだったのではないでしょうか。。。
調べればすぐに分かることなんです。
ビオフェルミン自体は、ヨーグルトのように害のないものといわれているため、獣医師が処方箋を出すうえで慎重になることはごく稀のようです。ですが、効き目もなかったら、もうなんといいましょうか、無意味でしかありません。
なんのための処方なのでしょうか?
犬が苦しんでいるのに、なぜそのような適当な処方ができるのでしょうか?

エリカラに下痢に....
【重要】抗生物質と一緒に整腸剤を飲む場合はコレ!
抗生物質6種の元という条件はありますが、一般的には抗生物質と飲むなら医薬品・ビオフェルミンR錠もしくはミヤリサン錠です。
ミヤリサン錠は、抗生物質と飲み合わせても腸内までしっかりと宮入菌が届くとされています。
ビオフェルミンRは病院でしか手に入りませんが、ミヤリサン錠は医薬部外品で薬局でも購入できますので自宅においておくと便利かもしれません。

本来ならば、犬の抗生物質と整腸剤の"飲み合わせ"に関して、獣医師からベストな提案があるべきだと思っています。飼い主が判断することではないでしょう。
ですが、現状では知っておくことが少なからず必要でもあり、致し方ないことだと考えています。製薬会社などの信頼できる情報源であれば、それを元に獣医師に"他に方法ありませんか?"などと質問することもでき、それがより良い犬の医療を受けられるきっかけになると思うからです。
当記事は、ビオフェルミン製薬会社のHPを参考にしています。