馬肉が食物アレルギーになりにくいとされる理由
と
馬肉を生肉で食べても安全とされる理由について
[犬の手作りごはん]
ゴールデン・レトリーバーセナは2歳の頃から完全手作り食です。
手作り食になってから様々なお肉を試してきました。
その一つが馬肉。
最初に生肉として食べたのも馬肉でした。
手作り食では加熱肉をあげている方生肉をあげている方、それぞれいらっしゃると思います。セナにも加熱肉・生肉の両方あげています。
生肉としてお肉の種類を選ぼうとした時に【馬肉】がすぐに候補にあがりました。犬のいるご家庭で馬肉をあげている話を聞いていたからです。
馬肉は
- ヘルシーで脂肪が少ない
- 生肉で食べても安全
- アレルギーになりにくい
といわれることもあり、魅力的な食材だなと思っていました。ただ、【なぜ?】の部分がすぐには理解できなかったため、食物馬肉が食物アレルギーになりにくいとされている理由やなぜ生肉でも馬肉は安全と言われるのか?などをについて記事にまとめることにしました。
愛犬のための食材選び、理由を知っておくことでより適切に選んであげられるのではないかと思っています。
少々専門的な話かもしれません。
目次
馬肉は犬が食べても食物アレルギーの可能性が低い?
馬肉はなぜ食物アレルギーになりにくいのか
一般的にアレルギーを起こしやすい食材は
小麦・牛乳・鶏卵などといわれています
ゴールデン・レトリーバーセナは馬肉の食物アレルギーの可能性が高いわけですが
一般的に馬肉といえば「食物アレルギーになりにくい」「生肉で食べられる」お肉として昨今犬の手作り食では注目を集めている食材です。
「馬肉は食物アレルギーになりにくい」といわれることが多くても「なぜ?」にはあまり触れられていないと感じていましたし、馬肉を扱っているお店の方もあまり詳しくはわからないようでした。
セナがアレルギーを発症しない食事を探す上でも「馬肉は食物アレルギーになりにくい」という理由には非常に関心がありました。
そこで自分で調べてみました。
すると、【抗原度が低い】という点が「馬肉は食物アレルギーになりにくい」といわれる一番の理由ではないかということが分かりました。
抗原度といっても、何?という感じですよね。
抗原・抗原度とは何か
まず、「抗原とは何か」というと・・・
抗原とは
生体に入った際に、抗体産生をはじめとした免疫反応を引き起こし得る物質のことを総称して抗原と言います。
通常では、細菌やウイルスなどの外来病原体や異種タンパク質などが抗原となり、自分の身体を構成している物質については抗原になりませんが、時に身体を構成している成分自体が抗原となって免疫反応が起こることもあります(自己免疫性疾患)。また、異物に対して過剰な免疫反応が起こり発症する症状のことをアレルギーといい、アレルギー反応を引き起こす抗原のことを特に「アレルゲン」と呼ぶこともあります(たとえば食物アレルギーで鶏卵が原因となる場合、鶏卵=アレルゲンであるといった言い方をします)
免疫反応を引き起こす物質を抗原と呼んでいるんですね。また、食物アレルギーの抗原になるのは動植物のタンパク質であることがほとんどだそう。
抗原とは免疫反応を起こす物質であり、
抗原度というのは食物アレルギーの引き起こしやすさを表したものです。
この抗原度が馬肉は低いらしいのです。
次が食品と抗原度を一覧で表した表です(東京医大式食物抗原強弱表)
食品と抗原度(アレルギーの引き起こしやすさ)を表した表
from もぐもぐ共和国
アレルギーを引き起こしやすい食品・引き起こしにくい食品を抗原度によって5段階で分けてあり、馬肉は下から2番目のグループに分類されています。
馬肉が分類されているのは表で見るところの左から2列目、上から3行目です。
最もアレルギーを引き起こしにくい分類よりは1段階上で、鹿肉・うさぎ肉と同じ分類です。
代表的な魚と肉だけピックアップした表が下記。
グループ1:最もアレルギーを引き起こしにくい抗原度の低い食品グループ
グループ5:最もアレルギーを引き起こしやすい抗原度の高い食品グループ
グループ1 | かえる肉、きす、あなご |
グループ2 | 馬肉、うさぎ肉、鹿肉、鯛、ムール貝 |
グループ3 | 羊肉、カンガルー肉、すずき、しらす、たこ、帆立貝 |
グループ4 | 鮭、たら、かつお、いわし |
グループ5 | 鶏肉、鶏卵、牛肉、豚肉、牛乳、さんま、さば |
確かに馬肉は抗原度は低いと分類され、アレルギーは引き起こしにくいといわれている理由がこの抗原度の低さにあるだろうということが確認できました。
犬は人とまた違う可能性馬肉の食物アレルギー
以上のように馬肉が食物アレルギーになりにくいというのは噂レベルではなく、科学的に抗原度が低いという理由からいわれているのではないかと推測できます。
個人的には馬肉がアレルギーになりにくい理由がはっきりしてスッキリしました。
しかしながら、人にも犬にもいえることですが昔は食物アレルギーとしての発症例が少なかった食物にも、アレルギー反応を示す事例が増えてきているのも事実です。
犬の食物アレルギー検査項目に馬肉が追加されたこともそれをまた示していると思います。
ここで、注意しておきたいのが上記で確認した食品を抗原度で分類した表はあくまで人のアレルギー反応を基準にしたものということ。
犬のアレルギー反応については解明されていない部分が多く、犬を対象にした場合にどの食品がどの抗原度を持つのかについては不明です。
そのため馬肉についてもそれ以外の食品についても、確かに人にとっては抗原度が低い食品であっても犬の場合どうなのか?については、推測でしかないといったところでしょう。
穀物飼育で育てられた馬肉
馬肉が食物アレルギーを引き起こしにくいとされる理由の1つとして、馬肉を卸・販売している方からこんな話も聞きました。
「馬肉が食物アレルギーを引き起こしにくいとされる理由の1つは、
馬を育てる時に穀物を与えることが少ないから」
また
「穀物を食べて育った動物の肉を食べていると、
穀物などのアレルギーを引き起こしやすい。
穀物アレルギーの子が穀物を食べて育った動物の肉を食べるとアレルギーが悪化する」
という主旨のことを仰っていましたが、なぜ?についてまでは分からないようで、自分でも調べてみましたがアレルギーとの関連については明確なエヴィデンスが見つけられなかったので断言はできません。
ただ、何を食べて育ったか、どのように育てられたのかというのは大事なことです。
牧草飼育と穀物飼育の肉の違い
馬や牛などの種類に関わらずいえることの様ですが
穀物を食べて育っていれば穀物よりの、牧草を食べて育っていれば牧草よりのお肉になり、それは実際に肉に含有される油の成分割合まで変わるそうです。
具体的には牧草飼育の方がオメガ3の含有割合が上がるといわれています。不足しがちなオメガ3脂肪酸を日々補えるというわけです。
日常的に摂る油分はオメガ6脂肪酸に偏っているとされており、気をつけないとオメガ3脂肪酸は欠乏しやすいという話はよく聞くのではないでしょうか。
オメガ3脂肪酸の欠乏は炎症を引き起こさせアレルギー疾患を発病しやすくなるといわれていますから、馬肉にしても「何を食べて育ったか?」がアレルギーに関係してくる可能性はあるのかもしれません。
牧草で育っていることを「グラスフェッド」と呼びます。昨今少しずつ広がりを見せています。馬は草食動物ですが、食肉用として太らせるために脂をのらせるために穀物飼育している場合もあります。牧草飼育しているか?まで確認ができない場合はオメガ3を食事に加えてあげるなどの配慮があるといいでしょう。
ここまで馬肉とアレルギーについて詳しく見てきましたが、次は馬肉なら生のままでも平気!といわれることの理由を調べてみました。
馬肉は犬が生で食べても食中毒になりにくい?
4つの理由
他のお肉と違って馬肉を生のまま食べても食中毒になりにくい理由は大きく分けて4つあります。
- 馬の蹄は一つ
- 馬は反芻動物ではない
- 冷凍処理による寄生虫の死滅
- 保菌している細菌の少なさ
1つ1つ詳しく確認していきます。
馬の蹄は一つ
蹄(ひづめ)を持った草食動物は、蹄の数によって奇蹄類(きているい)と偶蹄類(ぐうているい)に分けられます。
馬の蹄は1つで奇蹄類に分類されます。
それに対して、牛・鹿・豚・猪などは蹄が2つ以上ある偶蹄類に分類されます。
奇蹄類は偶蹄類よりも少なく、ウマ・バク・サイの3科・全23種のみです。偶蹄類は10科全184種類です。
この蹄の数がウイルス感染と関わっており、偶蹄類はかかるものの奇蹄類にかからない病気がウイルス感染症の口蹄疫や狂牛病。
馬は奇蹄類に属するため口蹄疫や狂牛病にかかる心配はありません。
馬は反芻動物ではない
馬は牛などと違って胃が一つで、反芻(はんすう)動物ではありません。
馬は牛と異なり一つの胃
from さぴあ
牛のほか、羊・ヤギ・鹿などが反芻動物にあたり、消化の過程で胃に一度入ったものを再び口に戻して噛み砕く「反芻」を行います。
反芻の仕組み
from なかほら牧場
この反芻という消化行為は牛・羊・鹿などの反芻動物の消化に欠かせない過程ですが、この反芻過程があることで牛などの反芻動物はO157などの腸管出血性大腸菌を消化管の中に保菌しやすいそうです。
一方で、馬は胃が一つしかなく反芻動物ではありませんので、O157などの命を危険に晒す腸管出血性大腸菌を保菌している可能性が低いため、適切な管理をしていれば生肉でも食べられるというわけです。
O157などの腸管出血性大腸菌は加熱で死滅します
カンピロバクターとサルモネラ菌
危険度が高い細菌性食中毒の原因で多いのが、カンピロバクターとサルモネラ菌です。
生肉に多いとされるカンピロバクターとサルモネラ菌ですが、馬肉はカンピロバクターとサルモネラ菌についても検出が少ないのも特徴です。
この点でも馬肉は他のお肉より生肉で食べるには安全とされています。
馬肉でも食中毒事例はゼロではありませんが、牛肉などよりも格段に少ないです
寄生虫
生肉で食べる時に大腸菌や細菌の他に気になるのが寄生虫です。
馬にはザルコシスティス・フェアリーという寄生虫がいる可能性がありますが、中心温度で-20℃で48時間・-30℃で36時間・-40℃で18時間の冷凍処理をすることで寄生虫を死滅させることができます。
冷凍されたもの解凍して食べるという過程を経ることで、生肉でも安全に食べることができます。
馬は体温は高いという説
生食で食べられる理由の1つとして、馬は体温は高いという説を見聞きしたこともあるのではないでしょうか。
web上では大抵馬は他の動物より5~6度高いと書かれていることもありますが、
例えば
牛の平熱:38.0〜39.0度
馬の平熱:37.0~37.8度
とされています。
ちなみに、牛だけでなく豚も鶏も馬の平熱より高いです。
大手の馬刺しメーカーだったり犬用馬肉販売店のページにも「馬の体温は他の畜産動物に比べて高い。だから、寄生虫や保菌が少ない。」と堂々と書かれているものの
上記の体温は獣医学事典参照。
この値に間違いはないと思うので、個人的には馬の平熱は特別高くないと理解しています。
【まとめ】馬肉が食物アレルギーになりにくいとされる理由と
生食の安全性
この記事では
・馬肉は食物アレルギーになりにくい理由
・馬肉は生のままでも安全とされる理由
について詳しくみてきました。
馬肉が食物アレルギーになりにくいといわれる理由は抗原度に低さにあるのではと推測ができました。
一方、馬肉は他のお肉に比べてなぜ生肉のまま食べても安全なのかについては、ウイルスに感染しにくい、保菌している細菌が少ない、寄生虫を冷凍で死滅させられるといった理由からだったことがわかりました。
元々犬は生肉食の方が消化に向いているといわれており、馬肉に限らず生肉を消化できるとされています。
それでもドッグフードから生肉に切り替える時、加熱食から生肉に切り替える時に「生肉でも大丈夫なのかな?」と多少の心配もあると思います。
そんな時には他のお肉よりも馬肉を選ぶと細菌や寄生虫の心配も少ないため、生肉スターターとして馬肉が選ばれることが多いのでしょう。
また、いくら馬肉が生肉で食べても安全といってもきちんと衛生管理されていることが大前提にあることを念のために記しておきます。
参考にしたサイト
・猪馬肉卸直営折戸商会facebook
・JSファーム株式会社
・生食用食肉(牛及び馬)における危害評価(案)
・SAITO FARM