ゴールデン・レトリーバー セナが指間炎・包皮炎などの皮膚炎を治すために、動物病院を変えたのは2016年3月(1歳3ヶ月)のこと。
今回の記事では、2016年3月に動物病院を変えたのちに、最初に行った細菌培養検査で検出された細菌3種と、その抗生物質治療についてまとめていきます。
皮膚炎治療に関する前回の記事
細菌培養同定検査 及び 細菌感受性試験の検査結果
3種の細菌が検出され、その中には効く抗生物質が限られている薬剤耐性菌がありました。細菌培養検査の結果までを書いたのが、前回の記事『皮膚炎の原因を探る。(1)細菌・真菌感染の検査』でした。
犬の皮膚炎治療
【抗生物質と多剤耐性菌】
この記事は、抗生物質と多剤耐性菌について、専門的な話についても触れながらセナの皮膚炎治療経過をまとめたものです。
犬が若く健康である限り、特に必要のない知識・経験談かもしれません。ですが、だんだんと年齢を重ねるについて、抗生物質を投与する機会もあるでしょう。また、ゴールデン・レトリーバーは皮膚炎になりやすいとも、アトピー性皮膚炎やアレルギーを持ちやすいともいわれています。
信頼できる医師がいれば、抗生物質を必要以上に怖がる必要はありませんが、セナが経験した抗生物質と耐性菌・皮膚炎について知っていただけて、もしもの時に"こんな皮膚炎を経験しているゴールデン・レトリーバーがいたな"と思い出して頂ければ、
そして皆さんの愛するゴールデン・レトリーバーはじめ愛犬がセナのような皮膚炎にかかりませんことを願って。
細菌検査によって検出された細菌3種類がこちら。(細菌培養同定検査)
- Str.pyogenes (化膿レンサ球菌)
- メチシリン耐性Sta.aureus(黄色ブドウ球菌)/MRSA
- Enterococcus.sp (エンテロユッカス/大腸菌・腸球菌)
このうち厄介なものが1つありました。
【結果】細菌培養と薬剤感受性試験
やっかいなのは、
"メチシリン耐性"と記載のある細菌
です。
検査結果画像中央[薬剤感受性試験]は、3種の菌に対してどの抗生物質が効果を発揮するのか試験した結果ですが、2番の細菌は 「ー(耐性あり) 」ばかりです。
※検査結果画像中央:左列のアルファベットは、抗生物質の種類を表しています
メチシリン耐性菌というのは、抗生物質メチシリンに耐性をもった菌、つまり抗生物質メチシリンが効かない菌のことなのですが、
実際には抗生物質メチシリン以外の抗生物質にも耐性を持つことが多いです。
唯一効く抗生物質ホスミシンの投与決定
多剤耐性菌である2.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌に、唯一 「+(効果あり) 」という結果が得られたFOM(ホスミシン)という抗生物質を投与することになりました。
このホスミシンという抗生物質は、抗生物質の中でも強いもので、大抵の細菌を殺すとされているそうです。
今回の検査結果をみても、2.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌だけでなく、1.3.の細菌にもホスミシンは「+(効果あり) 」という結果がでています。
検査結果がでるまでは、抗生物質ビクタスを飲んでいました
検査結果が出るまでの間約1週間は、"とりあえず"ということで、皮膚炎で処方する基本的な抗生物質の1つビクタスを飲んでいました。
獣医師の"とりあえず処方"に疑問を感じお聞きしたところ、これ以上の皮膚炎の悪化を防ぐためということだと聞きました。
獣医師が予測していなかった「耐性菌」という結果
細菌培養の検査結果に耐性菌が出た時には、獣医師も結果に驚いていて、まさか耐性菌が検出されるとは思っていなかったそうです。
担当獣医師が耐性菌の検出をほぼ予測していなかった理由の1つは、最初の診療から細菌よりもアトピー性皮膚炎が根っこにあるのでは、と疑っていたからです。
アトピー性皮膚炎もあるのかもしれません。
ですが、もしも皮膚炎の原因の1つに現在の抗生物質で効かない耐性菌があるのかも?と獣医師が予測していたのなら、効かないかもしれない抗生物質(ビクタス)を服用しなくても済んだのでは?
菌の一部にしか効かない抗生物質の服用は、抗生物質で細菌(常在菌を含め)を殺す一方で、抗生物質で効かない耐性菌を患部に残してしまう、耐性菌をつくりだしてしまう可能性があります。
残された耐性菌は、他の細菌がいなくなったことで一層優勢になることがあるそうです。そして、抗生物質の効かなかった菌が優勢になった結果、症状が悪化することもある・・・、耐性菌が発見された後に、獣医師から伺いました。
人・動物ともに薬剤が効かない耐性菌が増えているという現状があるのは事実の様です。
世界的にも問題視されている耐性菌について
2016年1月にゴールデン・レトリーバー セナが包皮炎・指間炎をはじめとする皮膚炎で動物病院にかかってからというもの、数種類の抗生物質を内服、軟膏で外用しました。
耐性菌はなぜ増えるのか、はっきりとしたメカニズムは未だ解明されていないといわれていますが、耐性菌は突発的に発生するのではなく環境に一定割合存在するとか。
耐性菌の増殖は以下のようなことがきっかけで増殖し
- 効果のない抗生物質の使用
- 不適切な抗生物質の投与期間
- 免疫が落ちている
感染症の原因となるそうです。
耐性菌の問題は2016年開催伊勢志摩サミットで議案にのぼった程、世界的に問題視されています。
2016年6月に、アメリカのペンシルベニア州で既存の抗生物質がいずれも全く効かない感染症例が出たというのをニュースもありました。
薬剤耐性菌(AMR:抗生物質に抵抗性を持った菌)が増加し,既存の抗生 物質では治療効果のない感染症が世界的に増加。一方,新たな抗生物質の開 発は減少傾向にあり,このままでは感染症の治療法がなくなる危険性。
薬剤耐性菌の問題は人だけの問題ではなく、犬をはじめとした動物医療のために抗生物質が投与されるようになり、人と同様犬においても耐性菌による感染症が増えてきているそうです。
耐性菌による犬の皮膚炎
こうやって耐性菌のことを調べていくと、
数ヶ月前にわたって飲んでいた抗生物質によって、善玉菌も殺され、下痢もして、免疫も落ちて・・・そんな中で耐性菌が出現してしまったのかなと思いました。
まさに、今世界的に問題視されている耐性菌に感染してしまったセナ。
唯一の救いは、ホスミシンという抗生物質が検出された耐性菌に効果あり、という検査結果が出たことでした。
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抗生物質ホスミシンを服用する
そして、メチシリン耐性Sta.aureus(黄色ブドウ球菌)/MRSAという耐性菌に効果があるという抗生物質ホスミシンを2週間半程度、服用しました。
強い抗生物質というだけあって、ひどい下痢です。
一緒にビオフェルミンを処方されましたが、全く効き目がありません。
抗生物質ホスミシンを1週間服用後の診察
抗生物質ホスミシンを1週間飲んだ時点で、動物病院でできる簡単な皮膚スタンプ検査(患部にセロハンテープでとり、顕微鏡で細菌をみる検査)を行いました。
皮膚スタンプ検査結果の判断
ここで重要になってくるのが「皮膚スタンプ検査結果をどう判断するか」です。
獣医師は顕微鏡で細菌がいるかいないか大筋を判断するので、まっさらに綺麗でない限り推測の域をでません。
そして皮膚スタンプ検査結果。
やはり『う〜ん、大体の細菌はいなくなっていると思うんですけれど・・・』という状態でした。
もう1週間抗生物質ホスミシンを飲んでから細菌培養検査に出すか、現時点で検査に出してしまうか、判断が必要でした。
細菌培養検査にかかる時間と抗生物質投与の判断
細菌培養検査は結果がでるのに少なくとも1週間はかかります。
検査に出すのが早すぎると、細菌が残っており再検査が必要になる可能性が高くなります。
かといって、細菌培養検査に出すのが遅ければ抗生物質を服用しなければいけない期間が長くなってしまう。
軽度の皮膚炎の場合、動物病院で行う皮膚スタンプ検査で『治っていそう』と獣医師が判断すれば、外部機関が行う細菌培養検査に再度出すことは稀なのだとか。
しかし、セナの場合耐性菌が検出されたこともあり念のため、細菌培養の外部検査に出し"細菌がいない"と確認しようという話がなされていました。
外部の細菌培養検査に出すのを翌週に回すかどうかという提案は「検査費用がかさむので」という医療費の面を獣医師が配慮してくれての案でした。
ですが、セナが抗生物質で下痢をし続けていたこともあり、金銭面よりも抗生物質の服用を少しでも短くできる可能性にかけたいと・・・
細菌培養の再検査を視野にいれ、抗生物質ホスミシン服用1週間という少し早い段階で、外部機関の細菌培養検査に出すことにしました。
細菌培養検査の結果。耐性菌はいなくなった!
抗生物質ホスミシンを飲んで1週間という少々早い段階で、出した細菌培養検査。
結果がでるまでに、更に1週間半程度かかりました。
抗生物質は、細菌培養検査の結果を受けるまでのみつづけていたので2週間半の服用でした。
そして、検査の結果!
耐性菌を含めた3菌種全部やっつけました!
最もやっかいだった耐性菌を含めて3菌種全ていなくなっていました。
- Str.pyogenes (化膿レンサ球菌)
- メチシリン耐性Sta.aureus(黄色ブドウ球菌)/MRSA
- Enterococcus.sp (エンテロユッカス/大腸菌・腸球菌)
しっかりと皮膚炎の原因となる細菌の種類を特定して、抗生物質を処方するという治療の大事さを痛感。
『皮膚炎の抗生物質だったら大体これね〜』と、獣医師の経験則と勘のみで処方される抗生物質の怖さを知りました。
耐性菌を含めた3菌種はいなくなったと同時に、また新たな細菌が検出されたという検査結果連絡を電話で受けました。
細菌培養検査で、新たな菌が検出
最初の細菌培養検査では検出されなかった菌が検出されました。Acinetobacter(アシネトバクター)という菌です。
次は、この菌にどう対処していくのか。
犬の皮膚炎治療にかかった医療費
2016年3月に皮膚炎治療ために、動物病院を変えたのちの医療費です。
耐性菌を退治するための治療費(1回目) ¥7344
内訳
- 診察料 ¥1080
- 薬剤感受性試験(3菌種) ¥4320
- [抗生物質]ホスミシン1週間分 ¥2268
- [整腸剤]ビオフェルミン1週間分 ¥756
耐性菌を退治するための治療費(2回目) ¥10206
内訳
- 診察料 ¥1080
- 皮膚スタンプ検査 ¥1080
- 一般細菌菌培養同定(外部検査)¥5400
- [抗生物質]ホスミシン1週間分 ¥2268
- [ステロイド剤]プレドニゾロン5 ¥378
動物病院を変えた後
ここまでの皮膚炎治療にかかった医療費
合計医療費 ¥74,682
- 1回目診察 ¥57,132
- 2回目診察 ¥7,344
- 3回目診察 ¥10,206
1回目の診療では検査の種類が多く、¥57,132と高額医療費に。
2回目・3回目は検査+抗生物質で1回につき¥7,000〜¥10,000程度の医療費でした。
犬の皮膚炎:抗生物質と多剤耐性菌治療を振り返って
こうして皮膚炎の治療過程を振り返ると、なぜ皮膚炎の初期段階から細菌培養検査をしなかったのか、と疑問に思います。
それは、獣医師の方針なのでしょうか、どのような理由かは推測しかできません。
皮膚炎の検査は時間と費用がかかるからという理由で、そして大抵の皮膚炎は抗生物質投与で治ってしまうからという理由でしょうか。
飼い主によっては、検査はしないで、先生とりあえずお薬ちょうだい。という方もいらっしゃるようなので、獣医師は一概に検査を絶対にするべきともいえないでしょうか。
最初の動物病院では、原因はわからない。ただそれだけでした。皮膚炎原因の可能性の1つとしてアレルギーの話はでたものの、細菌培養検査の話はでませんでした。
確かに皮膚炎にかかった全犬に必要な検査ではありませんから、とりあえず処方した抗生物質で治ってしまえば、それに越したことはないのかもしれません。
ですが、その治療方針のもとでは、治る犬もいれば治らない犬もいる、そしてたまたま外れた犬はセナのように悪化してしまう・・・。
でも悪くなってからやっと細菌培養検査をするなんて、何だか違うのでは、と感じました。せめて、細菌培養検査という方法があって、と最初に説明を受け治療方法を選択したかった。
細菌培養検査を皮膚炎発症の早い段階で行えたら、適切な抗生物質を最初から処方してもらえたら、セナの皮膚炎はここまで悪化しなかった。
辛い下痢だって少なく済んだ。
耐性菌が出現する可能性はとても低かったに違いない。そう思いました。後悔しても仕方ないけれど、皮膚炎は慢性化すると完治がかなり難しいといわれるだけに、悔やまれる部分があります。
この記事『皮膚炎の原因を探る。(2)多剤耐性菌が原因だった?[犬の皮膚炎]』は、2016年3月〜4月の皮膚炎治療のうち、耐性菌と抗生物質投薬についてまとめたものですが、
2016年7月現在感じることは、医師だけでなく動物病院をしっかりと選ばなかった、獣医師の意見に流された自分にも責任はあるということ。
専門家である獣医師を信頼することは必要ですが、獣医師を決して"信仰"してはいけない、頼りきってはいけないことを改めて学びました。
この後の皮膚炎治療
耐性菌を殺すための抗生物質ホスミシンで下痢が続き、体重減少もしていたセナ。
新たに検出されたAcinetobacter(アシネトバクター)という菌を退治するために、内服薬の抗生物質ではなく身体に負担の少ない軟膏の抗生物質を選択しました。
次回の皮膚炎治療の記事では、Acinetobacter(アシネトバクター)という菌へを退治する治療をまとめていきます。
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耐性菌をやっつけた後の指間炎治療
指間炎の原因を探る。(3)耐性菌、その後の治療[犬の皮膚炎]
(参考)動物病院の窓口精算が可能なペット保険
セナはこの時ペット保険に加入していませんでした。医療費が高いことから先生に「保険入っている?」と聞かれました。
確かに、入っていればな。と思いました。
その後加入しました。