【犬のアポキル錠 - 1 】
アポキル錠の概要
及びかゆみ止め効果について[犬の皮膚炎]
犬のアトピー性皮膚炎のかゆみに効くアポキル錠の記事です。
環境アレルギーともいわれ根本の原因を特定できないためにその原因を取り除くことが難しい、犬のアトピー性皮膚炎。
アトピー性皮膚炎のかゆみ緩和治療に画期的な薬がもうすぐ使用開始できる。と、獣医師より2016年春から度々聞いていました。
そして、2016年9月上旬ゴールデン・レトリーバー セナの指間炎をはじめとする皮膚炎のかゆみ止めとして、動物病院で処方されたのが新薬アポキル錠でした。アポキル錠は、2016年7月に日本で販売開始されたばかりの犬用アトピー性皮膚炎・アレルギー性皮膚炎の痒み緩和薬です。
ゴールデン・レトリーバー セナ 犬の皮膚炎治療に関する記事一覧
アポキル錠(アポクエル錠)に関する詳しい情報
- アポキル錠の添付文書(アポキル錠の用法用量副作用などの記載あり)
- ZoetisJapanが解説する犬のかゆみ治療薬 (アポキルは中盤のオクラシチニブに該当)
- 海外のアポキル錠APOQUEL(アポクエル)錠
アポキル錠の関連記事
- アポキル錠の副作用・Q&A
- アポキル錠の服用方法と実際の費用
- 【指間炎before&after写真あり】アポキル錠を1週間服用後指間炎の変化をまとめた記事
今回の記事では、アポキル錠が効く仕組みと効果の早さ、犬のアトピー性皮膚炎・アレルギー性皮膚炎の従来薬との比較情報をまとめていきます。
本記事における、アポキル錠の効果効能、安全性、副作用、服用方法、臨床試験結果はZoetis社公開情報によるものです。
海外でも注目を集めているアポキル錠ですが、まず最初に、アポキル錠がどのようにしてアトピー性皮膚炎・アレルギー性皮膚炎の痒みを止めるのか確認したいと思います。
アポキル錠とは
アポキル錠(アポクエル錠)の製造販売元
アポキル錠は、ゾエティス社という医薬品メーカーが製造販売している『アトピー性皮膚炎に伴う症状及びアレルギー性皮膚炎に伴う掻痒の緩和』を目的とした犬用内服薬です。
ゾエティスはアメリカの会社で、アメリカでアポクエル(Apoquel)錠が動物病院で処方されるようになったのは2015年春のことです。アポキル錠はここ数年で急速に広がった薬といえるでしょう。
アポキル製造販売元Zoetis(ゾエティス)社
アポキル錠は痒みを断ち切る薬
アポキル錠とこれまで犬のアトピー性皮膚炎に使われてきたステロイド剤や免疫抑制剤とは、種類が異なる医薬品といわれています。
アポキル錠には、細胞が伝達するかゆみの信号サイトカインを阻害する働きがあります。かゆみの信号を送る特定のサイトカインの伝達を阻害する薬はこれまでになく、アポキル錠がはじめて実現しました。まさに新薬というわけです。
かゆみの信号が脳にまで伝わらないことによって、犬が皮膚を掻きむしる行為を自然にやめることができ、炎症の悪化を食い止めることができるのがアポキル錠です。
犬の皮膚炎治療は
痒みの悪循環を断ち切ることが大事
痒みを感じなければ、犬も自然に皮膚を掻きむしるのをやめることができます。
炎症を起こしている皮膚を回復させるためにも、犬が掻いたり舐めないことがポイントとなります。
アポキル錠と根本治療
このようにアポキル錠はかゆみの伝達を断ち切ることで、犬のアトピー性皮膚炎・アレルギー性皮膚炎の痒みの症状を緩和すること。そしてかゆみによる搔き壊しと二次感染を食い止めることができるお薬です。
しかし、他のアトピー性皮膚炎治療薬と同様アポキル錠においても、基本的な皮膚炎治療をまず最初に行うことが大事です。
例えば犬の皮膚炎で多い細菌真菌感染は、感染している細菌真菌をやっつけない限り皮膚炎は治りません。アポキルで仮に一時的に痒みが治まっても、アポキルをやめれば当然痒みが戻ってきます。
皮膚炎原因追求をしている間の痒みや、根本原因を取り除くことが難しいアトピー性皮膚炎の痒みに役立つのがアポキル錠といえるでしょう。
犬が痒みを感じないということ
アポキル錠で痒みを断ち切る、それはもう画期的な薬です。獣医師から動物の皮膚炎治療はアポキルで変わったと聞くくらい、画期的な薬です。
ステロイドよりずっと副作用が少なく、効果と即効性が高いといわれているアポキル錠。犬が痒みが感じないでいられる、どれほど嬉しいことでしょうか。寝ても覚めても掻きむしる、夜中まともに寝れないほど痒みを感じている。そんな状態から抜け出すことができるんです。
とても素晴らしい薬なのですが
念頭に置いておきたいのは、犬が痒みを感じないことの意味。
実際の生活の中では、皮膚炎などの最初のシグナルである"痒み"が犬を感じている姿をみて、何か様子がおかしいな と気づくことも多いもの。アポキル錠を飲んでいると基本的な痒みを断ち切るため、犬は様々な痒みを感じにくい状態になります。
アポキル錠を飲んでいると "痒みのシグナル" が出なくなるわけですが皮膚炎を引き起こしているアレルギーやアトピーそのものが治ったわけではありません。「犬が痒みを感じないことの意味」とは、皮膚に今までと異なる炎症や異常はないかという日々の観察や、原因を除く努力をしっかりと継続して続けていく必要があるということです。
痒みを断ち切ることでアトピー性皮膚炎・アレルギー性皮膚炎の悪循環を断ち切るのがアポキル錠の特徴でした。
次はアポキル錠の効果について確認したいと思います。
アポキル錠のかゆみ止め効果について
アポキル錠の3つの特徴
アポキル錠が犬のアトピー性皮膚炎治療薬として注目を集めている特徴は3つあります。
(1)【即効性と有効性】
薬の効き目がステロイド剤と同じくらい早く、効果も高い
(2)【臨床試験の数】
アトピー性皮膚炎およびアレルギー性皮膚炎の犬に対して、800頭以上の犬での臨床試験により、有効性が示されている
(3)【種々のアレルゲンに対応】
犬アトピー性皮膚炎のみならずノミアレルギ-性皮膚炎、食物アレルギー、疥癬などのアレルギー性皮膚炎に対応します。(以上 Zoetis)
臨床試験数800頭は決して多くないと思いますが、犬の医薬品では多いほうなのでしょうね。また、アポキル錠は様々なアレルゲンの痒みに効き、アトピー性皮膚炎だけでなく各種アレルギー皮膚炎の痒みにも効果を発揮するというのが、とても特徴的です。
薬の説明ではアトピーだけでなくアレルギー性皮膚炎全体に対応する旨が記載されていますが、実際の臨床現場ではアポキル錠は個体差はあるもののアトピー性皮膚炎に効きやすく食物アレルギーには効きにくい傾向があるそうです(獣医師談)。
アポキル錠の特徴の1つには効果の即効性が高いことがあげられますが、服用からどの程度でアポキル錠は効果を示すのでしょうか。
アポキル錠の即効性
アポキル錠は飲んでから40分という速さで痒みの減少効果を示すことができます。
ここに、アポキルとステロイドの痒みの減少速度と痒みの評価を表したグラフがあります。
[痒みの減少効果 比較]
アポキル錠とステロイド剤
緑の線がアポキル錠を飲んだ犬の痒み評価(飼主による)
上記のグラフは、オーストラリアでの実験でアトピー性皮膚炎の犬にステロイド剤とアポキル錠を28日間それぞれ投与した場合、飼い主からみて犬の痒みがどの程度減少したかを示したものです。(Zoetis)
アポキル錠はステロイド剤とほぼ同じ速さで効果が表れ、服用から4時間後までに痒みは急速な減少を見せはじめます。
そして、実験の28日間を総じてみるとステロイド剤よりもアポキル錠の方が平均的に犬は痒みを感じていない様にみえたという結果が得られています。
ステロイド薬はかゆみ止め効果が強く即効性がある反面、長期連用による副作用やリバウンドなどの懸念があるのが特徴です。
その一方で、アポキル錠は、即効性のある効き目がありながら副作用が少ないのが特徴です。
効果の早さと副作用の少なさでアポキル錠が動物病院の獣医師にも選ばれることが多くなったわけですが、従来の犬のアトピー性皮膚炎治療薬4種の利点と問題点についても確認しておきたいと思います。
従来のアトピー性皮膚炎治療薬4種類
メリット・デメリット
比較表
ここではアポキル錠以外の犬のアレルギー性皮膚炎・アトピー性皮膚炎の治療薬に目を向けたいと思います。
犬のアトピー性皮膚炎の治療方法は少なく、以下の4種類が主な治療方法です。
- ステロイド剤の内服薬
- ステロイド剤の外用薬
- 免疫抑制剤
- インターフェロン
これまで犬のアトピー性皮膚炎の治療に使われてきた一般的な治療薬(ステロイドやインターフェロン等)には、それぞれ異なった利点と問題点があります。
比較表で詳しく見てみてみましょう。
アトピー性皮膚炎・アレルギー性皮膚炎の主な治療方法
メリット・デメリットの比較表
アトピー性皮膚炎治療剤 | 利点 | 問題点 |
---|---|---|
経口ステロイド剤※ ・プレドニゾロン ・メチルプレドニゾロン等 【処方薬例】Panafcortelone(プレドニゾロン)5mg | ・即効性 ・高い有効性 ・低価格 | ・長期服用に伴う副作用 ・飼主のステロイド剤に対する恐怖意識 |
経口シクロスポリン剤 (通称:免疫抑制剤) 【処方薬例】アトピカ25mg | ・犬アトピー性皮膚炎に対する高い有効性 ・高い安全性 | ・効果発現に時間がかかる ・適応範囲が犬アトピー性皮膚炎に限定 ・カプセル剤の投与しにくさ |
外用ステロイド剤 ヒドロコルチゾン アセポン酸エステル等 【処方薬例】ビルバックコルタバンス | ・即効性 ・高い有効性 | ・局所の適用に限局 ・ステロイド皮膚症に代表される局所副作用 |
注射用犬インターフェロン製剤 | ・高い安全性 | ・効果発現に時間がかかる ・適応範囲が犬アトピー性皮膚炎に限定 ・投与が煩雑 |
引用元ゾエティスジャパン
副腎皮質ホルモン剤を“ステロイド剤”と表記する。
免疫抑制剤とインターフェロンは、効果はアトピー性皮膚炎に限定されるので、各種アレルギーによる痒みを発症している犬には効果がみられません。また投与のしやすさからステロイド剤がかゆみ止めとして選ばれることも多くありました。
アポキル錠の効果、そして副作用について
各種アレルギーによる痒みを患う犬にとっては、これまで副作用が伴うステロイド剤に頼るしかない部分も大きかったそうです。
そして、犬のアレルギー治療薬に新薬アポキル錠が加わりました。
アポキル錠はアトピー性皮膚炎だけでなく各種アレルゲンによる痒みにも効果を発揮することができます。
その為、今までステロイド剤しか頼る薬がなかった犬にとっては、やっと副作用が少なく効果的な薬が登場したといえそうです。アポキル錠の解禁を心待ちにしていた獣医師の方も多いようでした。
この記事では、アポキルがどうやって痒みを止めるのか、また効果の早さや強さについて確認してきましたが、次に気になるのはやはりアポキル錠の副作用でしょう。
アポキル錠はステロイドなどの従来のアトピー性皮膚炎の治療薬と比較して副作用が少ないとされていますが、アポキル錠も全く副作用がないわけではありません。
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アポキル錠の効果効能・副作用をまとめるにあたり
アポキル錠の効果や副作用について詳しくまとめる事にしたのは、動物病院で獣医師から伺う話では情報が不足していると感じたからです。
指間炎などの皮膚炎で通院している動物病院では、アポキル錠の服用を強く勧められました。とても効果的な薬だと勧められると同時に気になるのは、新薬アポキル錠の副作用。担当獣医師はアポキル錠が解禁される前からアポキル錠を勧めていたものの、残念ながらアポキル錠の副作用についてはほとんど回答を頂けませんでした。セナだけでなく、アトピー性皮膚炎・アレルギー性皮膚炎の他の犬にもアポキル錠をどんどん使っていると伺う中での出来事。
多くの犬を診察し、多数の薬を処方する臨床獣医師にとっては、1つの薬についてはそんな程度の認識なのかもしれません。アポキル錠がいくら効果的で副作用が少ない薬だといっても、効果効能と副作用の事実を知った上で服用をさせたい。その思いでアポキル錠について、調べまとめるに至りました。
指間炎治療まとめ及び記事一覧:[犬の指間炎・治療方法]指間炎の完治を目指して。
アポキル錠は体重別に3種類
【参考:アポキル錠1日1回分の体重別投与早見表】
犬の体重 | アポキル錠/アポクエル(Apoquel)3.6mg | アポキル錠/アポクエル(Apoquel)5.4mg | アポキル錠/アポクエル(Apoquel)16mg |
3.0kg以上 | 0.5錠 | ||
4.5kg以上 | 0.5錠 | ||
6.0kg以上 | 1錠 | ||
9.0kg以上 | 1錠 | ||
13.5kg以上 | 0.5錠 | ||
20.0kg以上 | 2錠 | ||
27.0kg以上 | 1錠 | ||
40.0kg以上 | 1.5錠 | ||
55.0kg‐80.0kg | 2錠 |
アポキル錠 参考リンク
- 犬のアトピー性皮膚炎治療のガイドライン2015(英文)(CAD国際調査委員会)
- アポキル錠の添付文書(アポキル錠の用法用量副作用などの記載あり)
- ZoetisJapanが解説する犬のかゆみ治療薬 (アポキルは中盤のオクラシチニブに該当)
- 海外のアポキル錠APOQUEL(アポクエル)錠
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