アポキル錠の基礎知識と服用記録 犬の皮膚炎治療

【犬のアポキル錠 - 2 】アポキル錠の副作用・Q&Aのまとめ[犬の皮膚炎]

【犬のアポキル錠 - 2 】
アポキル錠の副作用・Q&Aのまとめ[犬の皮膚炎]

アポキル錠犬のアトピー性皮膚炎

今回の記事では、アポキル錠の安全性と副作用および服用等に関するQ&AをZoetis社のHPを参考にまとめています。

環境アレルギーともいわれ、根本の原因を特定できないためにその原因を取り除くことが難しい犬のアトピー性皮膚炎。そんなアトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎の痒みを断ち切ることができるのがアポキル錠です。

アポキル錠の効果については、[犬のアポキル錠1:アポキル錠の概要・かみゆ止め効果について]で詳しく書いています。

指間炎などの継続治療を行ったものの完治が難しくアトピー性皮膚炎ではないかと、診断されてしまいました。ゴールデン・レトリーバー セナ 犬の皮膚炎治療に関する記事

ステロイドに代わるかゆみ止めの薬として処方が広がっているのがアポキル錠です。ステロイドの副作用についてはよく知られているところではありますが、アポキル錠に副作用はあるのでしょうか?

記事内で詳しくみていきたいと思います。

※本記事における、アポキル錠の効果効能、安全性、副作用、服用方法、臨床試験結果はZoetis社公開情報によるものです。

アポキル錠(アポクエル錠)に関する詳しい情報

アポキル錠は従来の犬のアトピー性皮膚炎・アレルギー性皮膚炎治療薬と比較して副作用が少なく安全とされていますが、アポキル錠も全く副作用がないわけではありません。

まずはゾエティス社が公開しているアポキル錠の安全性についてです。

アポキル錠の安全性

アポキル錠の安全性として下記2点があげられています。

安全性(1)【副作用の低さ】

・アポキル錠は、ステロイド剤よりも副作用の発生が低頻度である(欧州における犬のアレルギー性皮膚炎の臨床試験結果)

・アポキル錠は、免疫抑制剤(シクロスポリン製剤)に比べて、副作用が軽い(国内における犬のアトピー皮膚炎の臨床試験結果)

安全性(2)【長期投与時の安全性】

米国におけるアポキル錠を最長630日間投与した臨床試験結果では、アポキル錠が長期治療においても安全かつ有効で、 患犬の生活の質の改善に貢献したことが示された

つまり、アポキル錠はステロイド剤や免疫抑制剤と比較して副作用が少ない上に、長期服用が可能という面から安全性が高い薬だとしています。

 

次はZoetis社で公開されているアポキル錠の臨床試験結果からアポキル錠を服用した場合の副作用を詳しく見ていきたいと思います。

アポキル錠の副作用

下記は、免疫抑制剤(シクロスポリン製剤)とアポキル錠を各々のグループに投与した日本国内の臨床試験における副作用の出現を示したものです。

アポキル錠の副作用は、下痢・マラセチア感染症・眠気

アポキル錠の副作用(犬)

薬による副作用アポキル錠免疫抑制剤
消化管障害
(下痢・嘔吐など)
下痢(1頭/4%)嘔吐(2頭/11%)
下痢(2頭/11%)
皮膚疾患および
付属器障害
(感染症・湿疹など)
マラセチア感染症(1頭/4%)紅斑(1頭/5%)
神経学的障害
(鬱・眠気など)
眠気(1頭/4%)なし
副作用出現頭数3頭(24頭中)6頭(19頭中)

アポキル錠を服用したアトピー性皮膚炎の犬24頭のうち、表れた副作用は、下痢1頭・マラセチア感染症1頭・眠気1頭。免疫抑制剤(シクロスポリン製剤)よりも、副作用が出た犬は若干少なかったという実験結果が得られています。

また死亡例や重篤な副作用はこの臨床実験内では認められませんでした。

アポキル錠製造販売元のZoetis社が公表している日本国内における臨床試験結果です。臨床試験のサンプル犬頭数がアポキル錠24頭・免疫抑制剤(シクロスポリン製剤)19頭というのは副作用を語るには少ないかなと思います。臨床試験の実施概要の明記もありません。

 

次は、アポキル錠を長期投与した場合の副作用に関する臨床試験結果です。

アポキル錠の副作用と臨床試験データ

アポキル錠は、長期で服用を続けても安全性の高い薬だといわれています。米国で最長630日という2年弱のアポキル錠投与の臨床試験がされました。アポキル錠の長期服用に伴って認められた副作用が下記です。

アポキル錠臨床実験概要
対象アレルギー性皮膚炎と診断された犬247頭
犬の年齢平均6.8歳
服用方法アポキル錠を1日2回14日間投与した後、1日1回投与を最長で630日間継続
投与期間(最短)115日間
投与期間(最長)672日間
投与期間(平均)401日間(中央値356日)
アポキル錠長期投与における副作用の症状

アポキル錠長期連用の副作用(犬)

アポキル錠副作用の症状とその割合(全247頭)
副作用の事象割合頭数
尿路感染症
膀胱炎
11.3%28頭
嘔吐10.1%25頭
外耳炎9.3%23頭
膿皮症9.3%23頭
下痢6.1%15頭

アポキル錠の副作用症状の上位は、尿路感染症・膀胱炎・嘔吐です。

 

 
 

アポキル錠長期投与における副作用まとめ

アポキル錠の臨床試験データからアポキル錠の副作用についてまとめると、アポキルの副作用は大きく2つあるといえそうです。

アポキル錠の主な副作用1:下痢・嘔吐などの消化器症状

アポキル錠の副作用が出やすいのは消化器官、症状としては下痢・嘔吐。アポキル錠を休む必要があった程の副作用は、嘔吐30回のうち9回です。

 

アポキル錠の主な副作用2:感染症

アポキル錠の副作用がでるとしたら下痢くらいでは?と動物病院で伺っていましたが、Zoetis社が公開している臨床試験結果をみると、下痢・嘔吐の消化器官への副作用の他に皮膚感染症(マラセチア感染症・膿皮症)や尿路感染症・外耳炎が報告されています。

皮膚感染症は免疫抑制剤全般で起こりやすい副作用です。免疫が抑制されることで皮膚感染を起こしやすくなるというのが理由です。アポキル錠は他の免疫抑制剤とは作用機序が異なり、免疫全体を抑制するのではなく痒みの信号を断ち切る薬ではありますが、臨床試験では皮膚感染症の副作用が報告されています。

以上のように、アポキル錠の長期服用においてステロイドのように全犬に副作用が認められるわけではありませんが、嘔吐・下痢・皮膚感染症の副作用が起こり得ると覚えておきましょう。

アポキル錠の投与期間

アポキル錠の臨床試験では最長630日と1年を超えた服用実験を行っていますが、実際に服用させる場合のアポキル錠の連続投与は1年が上限とされています。

 

次は、アポキル錠の服用に関するQ&Aです。

アポキル錠の服用に関するQ&A

下記、Zoetis社HPで公開されているアポキル錠に関するQ&A(こちら)から抜粋しています。抜粋のため、Question Numberは一部抜けています。

Q1.食餌の影響はありますか?

A.いいえ。アポキル錠の血中濃度は空腹時でも食後でも同じ推移であることから、食餌の影響は受けません。したがって犬が薬を嫌がる場合は、食餌と共に与えるといった工夫が可能です。

セナには食事と一緒にアポキル錠を服用させています。食事以外の時は、カボチャやサツマイモの中にアポキル錠を入れて飲ませます。アポキル錠は表面がコーティングされていないので気をつけないと溶けやすく、溶けると不味い様です。

 

Q2.投与後数日で症状緩和が認められた場合でも、2週間は1日2回投与したほうがいいのでしょうか?

A.症状の緩和が認められた場合は、14日間以内であっても1日1回投与への減量が可能です。また、急性炎で短期に治療が奏功した際には、獣医師の判断により投与を終了することもできます。

ステロイド剤は勝手に服用量を増やしたり減らしたりやめたりすることは危険ですが、アポキル錠はその辺りは気にしなくてもよいそうです。(獣医師談)

 

Q4.急性の皮膚炎に対し、アポキル錠を投与したところ、充分な改善が認められました。アポキル錠の投与を中断出来ますか?

A.はい。急性の皮膚炎に対してもアポキル錠は有効です。痒みや症状の緩和が認められた段階で獣医師の判断により投薬を中止することができます。ただしその際に、アレルギーの抗原が除去されていなかったり、悪化要因の探索ができていないと、投薬中断後に症状が悪化することもあるので、注意が必要です。

アポキルを処方してもらった動物病院では、ステロイド剤のようにリバウンドの副作用がない薬なので、飼い主が犬の皮膚炎の症状をみてアポキル錠をあげる・あげないを判断していいと伺いました。つまり、症状が良くなれば飼い主の判断でアポキル錠の服用を止めてもよい、逆に痒みが酷ければ飲ませてくださいという指導でした。但し、1度アポキル錠をあげたらある程度の日数をあげつづけること、症状が悪化する前に服用させることが、アポキル錠を効果的に使うためには大事だそうです。

 

Q6.食物アレルギーの原因となるようなタンパク質は製剤に含まれますか?

A.アポキル錠に、食物由来物質や、食物アレルギーの抗原と認識されるようなフレーバーは含まれません。

 

Q7.抗菌剤や駆虫薬と併用した例はありますか?

A.海外や国内臨床試験で、全身性抗菌剤や駆虫薬と併用した報告があります。
犬アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎では皮膚感染症や外部寄生虫症が合併している例がしばしば存在するため、本剤の投与開始前にこれらについて検査し適切な治療を行うことが肝要です。

 

Q8.消化器系の有害事象(嘔吐など)はアポキル錠療法の継続と共に解消しますか?それとも、アポキル錠の投与中止や用量調節が必要ですか?

A.嘔吐や下痢などの消化器症状が、アポキル錠の副作用として報告頻度が高いものです。ほとんどの場合は、消化器症状発現後もアポキル錠の用量調整や投与中止を行うことなく、これらの症状は緩和、消失しました。
一方、一部の嘔吐の症例(たとえば長期臨床使用時の試験によると、30回中9回)では休薬あるいは対症療法を必要としたので、副作用の発現状況によってご判断ください。

 

Q9.アポキル錠を分割してもいいですか?粉末状で投与できますか?

A.アポキル錠の中央には割線があり、2分割することができます。しかしながらさらに分割および粉末の投与での有効性/安全性/安定性などは評価されていません。

 

Q10.分割したアポキル錠剤は何日間もちますか?

A.本剤を分割投与する場合は、分割後3 日以内に使用してください。

 

アポキル錠は人のアトピー性皮膚炎には効果は立証されていません。アポキル錠は犬猫のアトピー性皮膚炎・アレルギー性皮膚炎の薬です。

 

以上がアポキル錠の副作用およびアポキル錠服用に関する疑問と回答です。

 

(再確認)アポキル錠の副作用

アポキル錠はステロイドや他の免疫抑制剤に比べれば副作用が少ない薬です。また長期服用をしてもステロイドのように必ず副作用が表れるわけではありません。

しかしながら、副作用が全くないわけではないこともわかりました。特にアポキル錠を長期服用する場合は、下痢・嘔吐・皮膚感染症の副作用に注意が必要そうです。

アトピー性皮膚炎を患っているワンちゃんは夜もよく眠れないことが多いです。だから、アポキルを飲んでぐっすり眠っていると本当に安心します。それだけアポキル錠が有難い薬である事は間違いありません。ただ、現在長期にわたって服用しているので副作用には気をつけながら、上手にアポキルを使っていきたいと思います。

 

今回の記事ではアポキル錠の副作用を臨床試験から詳しくみてきました。

犬のアトピー性皮膚炎のかゆみ止めとして注目を集めているアポキル錠ですが、アポキル錠の価格は一体どの程度なのでしょうか。

矢印アイコン[犬のアポキル錠-3]動物病院でアポキル錠を処方してもらった。処方箋費用はいくら?

 

 

アポキル錠は体重別に3種類

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アポキル錠1日1回分の体重別投与早見表

犬の体重アポキル3.6mgアポキル5.4mgアポキル16mg
3.0kg以上0.5錠
4.5kg以上0.5錠
6.0kg以上1錠
9.0kg以上1錠
13.5kg以上0.5錠
20.0kg以上2錠
27.0kg以上1錠
40.0kg以上1.5錠
55.0kg‐80.0kg2錠

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