台風雨低気圧と犬の体調不良
メカニズムと対策方法
[犬の下痢]
ゴールデン・レトリーバーセナは台風や雨の日が近づいてくると、体調を崩すことがあります。明らかにわかる症状は主に下痢。実際にこの8月上旬、台風の前日に突然下痢をしました。台風で下痢をした時の体調変化についてはセナの成長記録6歳8ヶ月に書いています。 ゴールデン・レトリーバー セナ 6歳8ヶ月 2021年8月 成長記録 ゴールデン・レトリーバー セナ日常の様子(成長記録)です。月別でまとめています。 子犬期からの現在まで ゴールデンレトリーバー ...
体重減少と手作り食の見直し[2021年8月]G's Family ゴールデン・レトリーバー セナ 成長の記録【 6歳 8ヶ月 】
雨の日や台風の日などの低気圧になる日に何となく身体が重い・だるい・頭痛がするというのは人でもあることで、気象病などと呼ばれたりします。
実際にセナは漢方医の先生に「台風や雨の日は自律神経の影響を受けやすいから気をつけるように」といわれており、人だけでなく雨や台風が体調を不安定にさせる現象は犬にも当てはまるようです。
普段から漢方薬を飲んでいるセナですが、服用していても下痢をしやすいため、セナが雨の時や台風の時などに体調を崩すと低気圧対策について調べることはよくあります。
今後のためも考えて「なぜ低気圧で気象病と呼ばれるような体調不良が引き起こるのか」、「対策はどのようなものがあるのか」をまとめておくことにしました。
ワンコの気象病に関する専門情報は少ないため人の情報を元にまとめている部分が多くあります。
まず最初に低気圧が身体にどんな影響を引き起こすのか確認したいと思います。
目次
なぜ雨や台風の低気圧で体調を崩すのか?
低気圧の時の身体の反応
セナの場合、低気圧が近づくことで下痢をすることが多いわけですが、なぜ低気圧で体調を崩してしまうのでしょうか。
気圧が変化した時に身体の中では次のようなことが起こっているそうです。
気圧が下がったり上がったりすると、耳の奥にある内耳が敏感に感知します。内耳とは、中耳のさらに奥に位置し、三半規管や前庭など体のバランスを保つ気管が集まっている部分です。
内耳が感じ取った気圧低下などの情報は、内耳の前庭神経を通って脳に伝達され、それによって自律神経はストレス反応を引き起こし、交感神経が興奮状態になります。
なるほど、耳の奥で気圧の変化を感じ取り、脳に伝達されることで自律神経に影響を及ぼすのですね。
自律神経の影響
そもそも自律神経は身体の中でどういう働きを担っているかというと、
自律神経には、「体を活動的にする交感神経」と「リラックスさせる副交感神経」があり、2つがバランスをとりながら、心臓や腸、胃、血管などの臓器の働きを司っています。
この自律神経、自分の意思ではコントロールできず、ちょっとしたストレスでもバランスが乱れてしまいます。
自律神経は身体に命令を出す大事な脳神経。
だから、低気圧で交感神経と副交感神経のバランスが崩れると各臓器に影響が出るということ。
「自律神経が心臓や腸、胃、血管などの臓器の働きを司っている」と書かれているように、自律神経の乱れがが体調不良であったりセナのように下痢として症状が表れるのでしょう。
漢方医の先生にいつも「ここの問題だから」と、頭を指差して言われます。「ここ(脳)が全部命令を出しているから難しい」という主旨のことも話されます。だからお腹だけをどうにか治そうとしても治らないし、脳(神経)を治す薬はないと。セナの下痢は、脳・自律神経が大きく関わっているようなのです。
気圧の変化を内耳で感じ取り、それが脳に伝達されて、交感神経が活発になる。自律神経のバランスが崩れるということは、身体の司令塔がバランスを欠くということだから、身体の各所に不調が生じる。
ということでしょう。
脳の混乱が原因
低気圧による自律神経への影響を「脳の混乱が原因」と題している慶応義塾大学医学部神経内科非常勤講師によるコラムの一部があり、低気圧による体調不良を理解する上で参考になりそうなので引用掲載します。(日経ヘルスUP)
人の気圧センサー
【脳の混乱が原因】
「気象病の引き金になるのは、気圧、気温、湿度変化。特に影響が大きいのは気圧で、梅雨や台風の時期は注意したい」。
気圧の変化が気象病を引き起こすのは、「内耳にある“気圧センサー”からの情報に体が適切な対応をできないから」(舟久保さん)。まだ研究段階ではあるが、体の平衡感覚をつかさどる内耳には、気圧の変化を感知し、脳に信号を送るセンサーがあるとされている。
本来、センサーは気圧の変化に体を順応させるためにあるが、「普段から自律神経が乱れやすい人だと、センサーからの信号を受けて脳が混乱してしまうことがある」(舟久保さん)という。
気象病の代表的な症状のめまいも脳の混乱で起こる。「平衡感覚の維持には、内耳からと視覚からの2つの情報が一致しなければならない。しかし、気圧の変化を受けて、気圧センサーからは『体のバランスが崩れた』という情報が届き、目からは『崩れていない』という情報が届く。このズレで脳が混乱し、交感神経が興奮して、めまいが生じる」(舟久保さん)
まだ気象病についてはそのメカニズムが解明されていないことも多く、「気圧センサーがある」というは2010年に発表された研究成果でごくごく最近のことなんです。
犬の気圧センサー
「犬の耳内にも気圧センサーがあるのか?」についてははっきりと書かれている文献は見つけることができませんでしたが、人の耳に気圧センサーがあるとわかる前に「鳥類の耳に気圧センサーがある」ということはわかっていたようです。
鳥類には気圧を感じる器官が耳に存在することが分かっています。彼らはこの能力を使って、自分の飛んでいる高度を知り、雨が降るかどうかなどの気象変化を予見し行動していると考えられています。
そして、哺乳類であるマウスにも気圧センサーがあることが研究でわかりました。
このことからも、犬にも気圧センサーがある可能性が大きいと考えられそうです。
気象病学について
気象・気候が人間や動物などに与える影響や関係を研究する学問は「生気象学会(にほんせいきしょうがく)」と分類されますが、1930年代にドイツで発展したまだ新しい研究分野です。
生気象学の定義「大気の物理的、化学的環境条件が人間・動物・植物に及ぼす直接、間接の影響を研究する学問」
気象医学は日本ではあまり重視されていない傾向にあるものの、気象医学はドイツが大きく発展に寄与しています。
気象現象が人間やその他の生物に与える影響を研究する学問は「生気象学」とよばれ、1930年代からドイツで本格的に研究がはじまりました。
関節に疾患を持つ患者さんに、気圧や湿度を自由に設定できる特殊な実験室に入ってもらって研究を行ったところ、気圧と湿度の両方を変化させたときのみ、痛みが出るということがわかりました。これが生気象学の初めての実証実験となりました。
生気象学の生まれたドイツや、アメリカなどでは、天気の変化が健康に与える影響に早くから着目し、天気予報とあわせて病気予報を発表するなどの取り組みが行われてきました。
日本では、1998年頃から気温や気圧低下が慢性痛モデル動物の痛みを悪化させることが実証実験で明らかになってきました。さらには2010年頃からの研究で、内耳に気圧のセンサーの役割があることがわかってきて、内耳からの信号で自律神経が乱れ、これがめまいや頭痛などのさまざま症状を引き起こすと考えられています。
これらの研究結果は「気象病」が認知されるきっかけとなりました。
ここまで、低気圧が近づくことでその気圧変化がどのように身体に変化や影響をもたらしているのか、を中心に見てきました。
西洋医学的対策
では、西洋医学的には気圧変化に対する脳の混乱、つまり自律神経の乱れにどう対応するのでしょうか。
一時的な自律神経の乱れによる症状であれば、例えば犬の下痢だったら症状に対して下痢止めなどの薬を処方するのが主な対策となります。
いわゆる対処療法です。
気圧センサーが影響を受け自律神経がバランスを欠くことで身体の各所への影響がでていることがわかったわけですが、この他に
「低気圧が近づくことで水分代謝が悪くなり、それが不調を引き起こすというメカニズムもある」ようなので、次は低気圧と水分代謝について書き留めておきたいと思います。
低気圧が引き起こす体内水分のアンバランス
「低気圧と水分代謝の関係」は主に東洋医学的な観点からの考えです。
低気圧が体調不良を引き起こすことを東洋医学の視点で考えると、特に「風邪」(ふうじゃ)「湿邪」(しつじゃ)の影響が大きいと考えられるそうです。これらの邪が合わさることで、からだの水の巡りが悪くなり「水滞(すいたい)」の状態になりやすく、からだが冷えることで更なる体調悪化を引き起こすそう。
さらに気圧が下がることで「気」の流れの異常が起こり、自律神経に負担がかかることも不調が出やすくなる原因のようです。
また気圧の変化により血圧が拡張することで、気圧の変化を感知する耳や周辺の頭部にも影響が出ると感がられています。
風邪と湿邪
◇「風邪」は、季節に合わない風を受けることで身体のバランスを崩します。季節的には春に強くなる邪であり、上半身特に喉から上に症状が出やすいと考えられています。
◇「湿邪」は、梅雨などの雨の多い季節や時季に強くなり、体内の水分が多くなったり偏ることで、身体の中に余分な湿(水分)が溜まりやすくなります。更に、この湿の影響を最も受けるのが脾=胃であり、消化力が落ち下痢・嘔吐などの症状が表れることもあります。
東洋医学の視点で考えると低気圧による雷雨や梅雨などで引き起こされる身体の不調は主に3つ考えられそうです。
- 高い湿度による水分代謝の乱れ(偏りや悪化)
- 高い湿度による消化力の低下
- 気圧変化による自律神経のバランス欠如
体内に余分な水分が溜まることで、血管が拡張したり、めまいや頭痛などが起こりやすいと考えられています。そのため、低気圧による体調不良には水分代謝を改善する生薬が配合された漢方薬が処方されることが多いそうです。
東洋医学的対策(漢方)
犬の気象病と漢方処方の情報は探したかぎりでは見つけられず、人の場合の処方を参考にしていきたいと思います。(参考:オペラシティクリニック)
東洋医学の視点で考えた、低気圧が引き起こす身体の不調の主な3つの原因として対策は下記のように考えられます。
- 体内の水分バランスを整える
- 胃腸を整える
- 自律神経を整える
自律神経を整える漢方
順番が逆になりますが、まず③「自律神経を整える」漢方はあるのかというと、「ない」といわれています。
が、人の場合自律神経のバランスを欠いている時に「加味逍遙散(かみしょうようさん)」が使われることがよくあるそうです。
自律神経というのは複雑なものでそう簡単には整えることが出来ません。漢方のアプローチも、自律神経のバランスが崩れたことで起きている症状に対処することになります。
胃腸を整える漢方
次は②「胃腸を整える」漢方はあるのかというと、「あり」ます。
胃腸が弱い場合によく使われるのが「六君子湯(りっくんしとう)」「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」「半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)」などの漢方だそうです。その子の体力や症状に合わせて選ぶ必要があります。
漢方の考えで胃腸を司る「脾」は湿邪に弱いため、胃腸が弱い人は「水滞」の状態を招きやすく、胃もたれや下痢なども起こりやすくなるそうです。
水分バランスを整える漢方
最後は①「水分バランスを整える」漢方はあるのかというと、「あり」ます。
体内の水分バランスを整える代表的な漢方は「五苓散」です。利水剤と呼ばれ、偏在している体内の水分を適切に配分するとされています。五苓散は、元々は下痢・嘔吐を伴う急性胃腸炎やむくみに使われる処方ですが、体内の水分バランスを整える働きことがあるから、低気圧による水分バランスの乱れ(漢方での水毒)を正すために処方されることがあります。
漢方を使うほか、冷たい食事を取らない・水分の取りすぎ・水分代謝を良くする排出に気をかける。水分代謝を良くする為には身体の流れ・血流を良くする・心臓サポートすることも大事。
低気圧と犬の体調不良まとめ
気候の影響を受けやすいセナの体調管理に少しでもヒントがあればと思いながら、雷雨・梅雨・台風などの低気圧による体調不良の原因と対策を探ってみました。
セナが診てもらっている漢方クリニックの医師は「自律神経が影響を受けやすい子にとって日本の四季は辛い」と話されていました。
春は季節の変わり目で不安定な天気が多く、梅雨が終わったら湿度も気温も高い夏がやってきて、暑い日の夕方には雷を伴うゲリラ豪雨が起きる。気温が下がり季節が進むと、秋雨に台風。そして、冷え込む冬。寒い朝かと思えば昼間には暖かくなり気温差が10度以上ある日も。
...というように、日本の気候は年間を通して変化があります。
日本に住んでいるからにはこの気候と付き合っていかねばなりません。
気象病学という学問があるように、低気圧の影響を受けること自体は身体の自然な反応でもあります。
なぜ低気圧が体調不良を引き起こすのか、そのメカニズムが多少なりとも理解できました。西洋医学的にも東洋医学的にも直接的に自律神経のコントロールは難しいことも再認識しました。セナの担当医も「自律神経を整える漢方はない」と、話しています。
体内の水分バランスを整える漢方「五苓散」を既に日頃から服用していますし、低気圧による体調不良への目新しい対策は今のところ見つけられなかったというのが本音のところですが、反対に現在の対策は間違えてはいないことも再確認できました。
低気圧による体調不良(下痢)を回避するためにできることはそう多くはないのかもしれませんが、日頃の体調管理やケアはまだまだできることがあるはず!と、セナの健康維持・向上に努めていきたいと思います。