歯の破折根管治療 犬の手術

獣医師に聞いた「歯が欠けた場合の5つの治療方法」と「選んだ治療」【犬の歯の破折治療】

犬の歯

ゴールデン・レトリーバーセナ7歳3ヶ月の時に歯が欠けて治療を行いました。

この記事では動物病院にかかった際に聞いた「犬の歯が欠けてしまった場合の治療の選択肢」を中心に破折治療についてまとめました。

歯の破折は外部の衝撃やアクシデントで起こることもあります。

「硬いものを噛ませてないから大丈夫」とは言えず、防ぐのが難しいこともあります。

噛ませるおやつや噛むものを私が気をつけてれば大丈夫だよね、と。現にそう思っていました。

防げない場合もあるからこそ、破折からの時間経過で選べる治療方法が変わるという点を知っておくことがもしもの時に役に立つかもしれません。

動物病院で聞いた話に加えセナの破折治療を検討する際に調べたことをまとめました。

犬の歯が欠けた場合の治療方法

犬の歯が欠けた場合の治療方法は主に5つあります。

どの治療方法を取るべきかは、犬の歯や身体の状態を総合的に見て決めることになります。

破折時の治療方法5つ

犬の歯の破折治療方法は主に以下の5つです。

  • 歯の欠けた部分を埋める治療
  • 歯の神経を削って欠けた部分を埋める治療
  • 歯の神経を抜いて歯を温存する治療
  • 抜歯
  • 経過観察

どの治療方法が選択できるのかは、以下の3つの点が大きく関わっているようです。

  • 「神経が出ているか」
  • 「修復可能な歯のかけ方か」
  • 「時間が経過しているか」
選択肢

歯の欠けた部分を埋める治療

「歯の欠けた部分を埋める処置」は神経が出ていない場合に可能となる治療です。

露髄をしていなければ、神経の処置は不要です。

ただし、露髄をしていなくとも歯が欠けていることで痛みを感じている場合があり、治療および更なる破折を防ぐために欠けた部分を補強します。

歯の割れ方が縦に割れてしまっている場合など見た目で判断できないこともあり、一見露髄していなくとも歯の欠けた部分を埋める処置を施すのが難しい場合もあります。

歯の神経を削って欠けた部分を埋める治療 (生活歯髄切断術)

「歯の神経を削って欠けた部分を埋める処置」は神経が出ていながらも、ごく限られた場合にできる治療です。

限られた場合というのは

破折に露髄を伴っているものの、破折から「24時間以内」長くても48時間以内に手術ができるという条件のことです。

つまり、歯が欠けた当日か翌日の緊急手術が必要になります。

破折から何時間としているかは獣医師によって多少の差がありますが、早ければ早いほど良く1日以内が望ましいようです。

歯の神経が出てしまっている場合には手術方法として(2)〜(4)の3つの選択肢があるのですが、

歯も温存できて神経も抜かなくて済むこの処置は露髄してからとにかく短時間で処置する必要があります。

神経が表に出るとそこから口腔内の細菌が神経の中に入っていってしまうので、神経を温存することができなくなってしまうそうです。

「破折してからすぐに発見できていること」
「技術的に手術可能な獣医師にすぐに診てもらえること」
「緊急手術などですぐに対応してくれること」
「犬が手術可能な体調であること」

という条件が揃った時にできる手術です。

セナが受けた(3)の神経を抜く手術よりも手術時間が短時間で済むそうです。また、セナが受けた(3)の神経を抜く処置はかなり細かい作業となり、更に医師の技術が必要になるので、こちらの(2)の処置の方ができる医師が多いようです。

歯の神経を抜いて歯を温存する治療 (根管治療)

「歯の神経を抜いて歯を温存する処置」は破折および露髄から長期間経過していない場合にできる治療です。

繰り返しになりますが、歯の神経が露出してしまうとそこから細菌が入るといわれています。

そのため露髄から1日〜2日経過してしまうと、神経を残すことができません。

ただし、数ヶ月から半年程度であれば根管治療で神経だけ抜き、歯を残すことが可能な場合が多いそうです。

シニア〜ハイシニアなどではない場合には愛犬の歯を温存したいと考える家族の方が多いと思いますが、根管治療には以下のような条件があります。

「高度な治療技術が必要」
「長時間の全身麻酔が必要」
「歯周病になっていない」

歯を温存する場合には神経を抜いて歯の内部を綺麗にする必要があります。

歯の神経を抜く治療は人であれば何度も歯医者に通って行う治療ですが、犬の場合はそれを1日、わずか数時間の間に全ての処置をする必要があるため、医師の高度な技術と経験が必要です。

もし、神経を抜く処置がうまくできなかった場合、人でもそうであるように抜髄後に痛みを伴ったり、歯の根元に感染が広がってしまうことがあります。

これは犬も同様で、根管治療がうまくいかなかった場合、歯根部で感染が広がり痛みを抱えることになってしまいます。

犬の場合、人のように自分で痛みを訴えることができないため、医師によっては半年に1回などの定期的なレントゲン検査を勧めます。

セナが受けた手術はこちらの(3)根管手術です。

抜歯

「抜歯処置」は破折時期に関わらず選択可能な治療です。

全身麻酔さえ可能であれば選択でき、他の破折治療方法と異なり特に条件などはありません。

露髄から長期間経過している場合や歯の折れ方によってはここまで説明してきた(1)〜(4)の治療ができないために、抜歯をせざるを得ないケースがあります。

縦に割れていると歯の修復が難しいそうです。

抜歯の良いところは以下の点です。

「対応できる獣医師の選択肢が広くホームドクターでも可能なことがある」
「手術代が他の治療方法より安い」
「他の治療方法より短時間の手術」
「その後の根管感染の心配が少ない」

ただ、破折による犬の抜歯は歯の根元がしっかりしていることが多いため、特に奥の大きな歯(第四臼歯)などの場合には根っこに合わせて3つに割ってから抜くなどの処置になり、破折治療の中ではシンプルな処置である抜歯であっても大変さが伴うようです。

犬の歯

抜歯では出血や術後の痛みも他の方法よりも大きいといわれていますが、歯を抜いてしまうので他の治療方法のように埋めたものが取れるといった心配もありません。

露髄を伴う破折から長時間経過している場合・歯周病やシニア犬の場合などに多く選択されるケースです。

経過観察

「経過観察」は全身麻酔が負担になる場合に選択されます。

犬の歯の処置には必ず全身麻酔が必要になるため、歯が欠けた・露髄があるという場合でも犬の体調によっては経過観察を選択することも多いそうです。

特にシニア犬では、破折をしていても皆がみな手術をするわけではないと、ドクターも話していました。

破折治療選択の難しさ

ゴールデン・レトリーバーセナ7歳6ヶ月カフェ前にて

歯の破折が起こってから、治療までの時間で選択肢が変わります。

破折以外についても然りですが

我が愛犬が破折するかもしれないと、歯の破折治療方法や選択肢について調べておくご家族の方はかなり少ないでしょう。

それは私も同じで、セナの歯が欠けてから初めて知ったことばかりでした。

ただ、破折の場合は(特に露髄を伴っている場合)、破折後すぐに治療可能な病院にかかることが出来れば「治療の選択肢が1つ増える」可能性が大きいです。

しかしながら、この「すぐに」が非常に短い。

その治療方法は、( 2 )歯の神経を削って欠けた部分を埋める治療 (生活歯髄切断術)でした。

この治療方法は破折および露髄している場合には歯を残すことが可能で、かつより犬に負担のない治療方法でもあります。

残念なことにまだ犬の歯に詳しい先生はひと握り。

今回の破折治療を通して痛感しました。

ホームドクターがこの手術をできるかという問題もあり、病院を探している間にどんどん破折から時間がたってしまうので、あらかじめ歯の治療が得意な動物病院の目処をたてておかないと選ぶことができない治療方法です。

歯の治療が得意でないドクターの場合、「抜歯を勧められた」という話もあります。この方は後から他の動物病院にかかって抜歯以外の選択肢があることを知ったようでした。

露髄からの経過時間で変わる治療

露髄からどのくらいの時間内であれば( 2 )歯の神経を削って欠けた部分を埋める治療 (生活歯髄切断術)が可能なのか、1つの参考を以下に記載しておきます。

前述で24時間〜48時間と書いたように、獣医師によっても変わる可能性があります。

注意したいのは、露髄(ろずい)を放置すると時間の経過とともに歯髄(しずい)は壊死してしまうということ。

その時間は意外に短く、1歳の犬ではおよそ3日、2歳の犬ではおよそ2日、3歳以上の犬では24時間以内であれば歯髄が生きている可能性が高く、歯髄を生かしたままの治療が可能です。

(略)

若齢犬で2日以内に治療を開始した場合は成功率が88.2%であるものの、日が遅れるほどに成功率は下がるとの報告もあるので、愛犬に露髄(ろずい)がある時には速やかに動物病院へ行くことをお勧めします。

【獣医師監修】犬の歯髄炎

3歳以上の場合24時間以内に判断し処置をしなければならないというのは非常に短い時間です。

 
 

露髄と痛み

破折箇所から神経が出ていなければ、神経に感染が起こりませんので経過観察する場合も多くあるそうです。ただ歯が欠けて神経を守る象牙質やエナメル質が薄くなっていることで、染みるような痛みや、噛んだ時の痛みなどを感じる可能性はあるとのこと。

犬は余程の痛みを感じるようになってから初めて、食欲減退・元気消失などの症状にでます。

少しの痛みでも反応する子はいて個体差もあるようですが、犬が痛みを示している時は相当痛いと思った方がいいそうです。

「症状に出ない」=「痛みがない」ではありません。

露髄している場合は、更に痛みは増します。

人では相当痛いそうで、犬もやはりかなり痛いだろうと。

セナも露髄してからの方が咀嚼回数が増えたり、痛みを感じていると伺えるような様子が強く出ました。

➤「歯が欠けてからの痛みや状態の経過記録【犬の歯の破折治療】

炎症がひどくなった場合

露髄を伴った破折の場合、症状が悪化するとどうなるかというと、最も懸念されるのが「(根尖周囲病巣/こんせんしゅういびょうそう)」です。

どんな症状なのか簡単に説明すると

露髄した部分から神経に細菌が入り込み、歯の根っこ(根尖・こんせん)が感染・病変を起こし、悪化すると頬に穴があく症状が伴うこともあります。

根尖周囲病巣 犬
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最初に根尖周囲病巣の症例を見た時はとても驚きましたが、露髄を伴う破折後の長期間経過した場合に一定数の犬が発症しているようです。

ただ同時に、露髄後全ての犬がこうなるわけではないとも複数のドクターが言っていました。

それでも頬に穴が開く可能性がある...と聞いたらやはりとても怖かったですし、そうなれば痛みも酷く食事もままなりません。

その時は手術するしかありません。

例えば、頬に穴こそ空いてないものの、頬が腫れているとか鼻水が出るなどという症状が出ており、歯石をとってみたら実は歯が破折しておりそれが腫れや鼻水の原因だったというケースもあるそうです。

選んだ治療は「根管治療」

セナに選んだのは神経を抜いて歯を温存する「根管治療」でした。

破折の状態・セナの痛み・全身麻酔の負担とで手術をするのかどうかについて大変悩みました。

特に破折から出血してからは根っこの感染の心配や、セナが痛みを強く感じているであろうことなどから「手術をする」という方向にシフトし、全身麻酔などを乗り越えられるように準備していきました。

そして、7歳という年齢で、この先まだまだ長生きしてもらう時にずっとこの破折した歯を抱えさせていくわけにはいかないと、またこの先のセナの犬生を考えたときに歯を温存する「根管治療手術」を選ぶに至りました。

ゴールデン・レトリーバーセナ7歳6ヶ月

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