犬の健康

犬の全身麻酔、手術をするなら知っておきたいこと。【全身麻酔って一体なに?副作用・致死率】

動物病院で診察を受けるゴールデン・レトリーバー

セナの歯が欠けたことによる(破折)歯科治療を全身麻酔手術で受けることになりました。

そこで

「全身麻酔とは何なのか」
「全身麻酔によって身体に何が起こるのか」
「全身麻酔のリスクは何があるのか」

などについて改めて学びました。

もし、愛犬が手術を受けることになった場合には、獣医師から麻酔リスクについての説明があり、血液検査などの術前検査によって麻酔をかけられるかの可否を判断することになりますので、全身麻酔について飼い主の介入できる余地はそう大きくはないのかもしれません。

しかしながら、どんな健康体の犬であってもどの獣医師が執刀しようとも全身麻酔は一定の致死リスクを抱えるものであり、最終的には手術を受けさせるかどうかの判断は家族に委ねられることになります。

全身麻酔手術はセナの人生に数回あるかないか。でも命に関わること。

次にいつでも見返せるように、学びのメモとして記事にしました。

全身麻酔下の犬のイメージ画像を一部用いています。苦手な方はお控え頂くのがよいかと思います。
私も犬の全身麻酔をどうやってかけるのか学んでいく中で動画や画像を見ましたが、それだけでも可哀想だなとか、見てられない、と感じるところはありました。でも、それが実際にセナがやることなんだと今は受け止めています。

当記事は、獣医師の話から聞いたこと・動物病院などの医療機関HPなどを参考に個人的に学んでまとめたものです。全身麻酔については生命に関わる一定のリスクがある処置となり、当記事はあくまでも個人の学びに基づいたものです。

【なぜ全身麻酔をするの?】
麻酔の定義と目的

 
 

全身麻酔は何のためにするの?

全身麻酔は何のためにするのか?

と聞かれた時、学ぶ前の私だったらどう答えたか。

手術は身体のどこかにメスを入れ痛みの伴う処置となるため

安全に手術をするために意識を失くし、痛みを感じなくさせるために全身麻酔をする

といったようなものだと思います。

恐らく多くの方が概ねこのような答えをするのではないでしょうか。

犬の全身麻酔

この答えも間違っているものではないと思いますが、曖昧であり、自信を持って答えられるものではありませんでした。

命を預ける全身麻酔について正しく知っておきたいと、改めて全身麻酔の定義や目的を確認しました。

全身麻酔の定義

全身麻酔は以下のように定義されます。

全身麻酔は「痛み刺激によっても覚醒しない薬剤性の意識消失」

全身麻酔とは、意図的に薬剤で意識消失状態を作ることです。

 
 

全身麻酔の目的

次は、麻酔の目的です。

全身麻酔には以下の3つの大きな目的があります。

  • 意識をなくす(鎮静)
  • 手術の痛みを感じさせない(鎮痛)
  • 筋弛緩(不動性の確保)

これは全身麻酔の三要素ともいわれるようです。

犬であっても歯科治療であれば、局所麻酔や鎮静剤で出来ないのかな....

と調べたのですが、意識が少しでもあるとやはり危険があるととのことで、やはり全身麻酔一択。

よほどシンプルで短時間の処置では無い限り局所麻酔や鎮静剤という選択肢はないようです。

人よりも検査や治療で全身麻酔を必要とする機会が多い犬ですが、上記の3つの目的を達成する全身麻酔薬とは一体どのようなもので、どのようにして身体に働き意識や痛みまでも感じなくさせるのでしょうか。

全身麻酔薬の効果と副作用

全身麻酔薬は3つから成る

犬の全身麻酔

全身麻酔薬は先程の3つの目的に沿ったそれぞれの薬剤を合わせて投与されるそうです。

  • 鎮静薬
  • 鎮痛薬
  • 筋弛緩薬

この3つの薬剤には、それぞれ以下のような役割があります。

鎮静は意識を消失させることで、患者さんの手術中の不快な思いや記憶をなくします。

鎮痛は痛みを軽減することで、手術中の適切な麻酔深度(麻酔の深さ、鎮静と鎮痛を掛け合わせた考え方)を保ち、手術刺激が加わっても患者さんが覚醒したり血圧の急激な上昇など有害反射が起きないようにします。

筋弛緩は骨格筋を弛緩させ、気管挿管時の喉頭展開(喉頭鏡をかけて声門を視る操作)を容易にし、全身の不動化や良好な手術視野の確保を目的とします。

薬を減らすためにこんな考えはどうでしょう。

「薬の負担を減らすために鎮痛剤はなくてもいいじゃないの?」

「意識さえ飛んでいれば痛みは感じないでしょ?」

「意識が戻る時に鎮痛剤が効いていればいいじゃない?」

鎮静剤(麻酔)によって意識がなくとも、鎮痛剤を打っていなければ、身体は痛みを感じます。

意識がないので「痛い!」って反応したり起き上がることはないだろう....ともいえず

身体に痛み手術刺激が加わることでの血圧や心拍の急激な上昇や意識消失からの覚醒が起こりうるのだそう。

そのため、鎮静と鎮痛の2つによって基本的には麻酔を管理するようです。

鎮痛剤はただ痛みを感じさせない為だけでなく、血圧・心拍を安定させるためにも必要です。

筋弛緩剤は、麻酔をかけ意識が消失した状態での呼吸維持のための気管挿管などのために投与されます。

全身麻酔薬の効果と副作用

全身麻酔に必要な3種類の薬剤にはそれぞれ副作用もあります。

全身麻酔薬効果副作用
①鎮静薬◇静脈麻酔薬:鎮静作用
◇吸入麻酔薬:鎮静作用、筋弛緩作用、気管支拡張作用
笑気の場合は鎮痛作用もあり
循環抑制(血圧低下・徐脈)
呼吸抑制
②鎮痛薬手術中・手術後の強力な鎮痛作用悪心嘔吐
呼吸抑制
傾眠
掻痒感
尿閉
便秘など
③筋弛緩薬筋肉を弛緩させる効果が長引くことによる誤嚥・呼吸抑制

各薬剤の副作用がいわゆる全身麻酔のリスクに繋がります。

全身麻酔の副作用を詳しく理解するには、薬剤がどのように身体に作用するか理解することがポイントとなると思うので、各薬剤別にどのように身体に作用していくのかを確認したいと思います。

麻酔薬には点滴などから静脈へ直接投与する「静脈麻酔薬」と肺から静脈に流れる「吸入麻酔薬」の2つの投与タイプがあります

鎮静薬(麻酔薬)

麻酔薬は脳に作用します。

麻酔薬がどうやって効くのか

脳の至る所に分布しているGABAA(γ-アミノ酪酸A)受容体に作用し

大脳皮質や覚醒中枢(橋や中脳などに存在)を

抑制することで意識を失わせる

意識を飛ばすために脳機能を抑制するので、

先ほど確認した副作用の「循環抑制(血圧低下、徐脈)や呼吸抑制」が起こり得ます。

鎮痛薬(麻薬)

手術中の鎮痛剤は麻薬(医療用麻薬)が用いられます。

鎮痛剤(麻薬)も脳に作用します。

鎮痛薬がどうやって効くのか

主に脳や脊髄のμ(ミュー)オピオイド受容体に作用して強力な鎮痛効果を示す

術中に主に使用される鎮痛剤の麻薬は、強力な鎮痛効果を持っているため、副作用もそれに伴い大きくなります。

「呼吸抑制(呼吸数低下)や術後悪心・嘔吐」の副作用が起こり得ます。

筋弛緩薬

筋弛緩薬も脳に作用します。

脳の筋収縮を引き起こす神経伝達部位に作用します。

筋弛緩薬がどうやって効くのか

神経筋接合部に作用して効果を発揮します。

術後に筋弛緩薬の効果が切れずに長引いてしまった場合、誤嚥や呼吸数の低下が起こりやすくなります。

ここまで、全身麻酔がどのような薬で構成され・どのように機能し・副作用は何があるのかについて確認しましたが、

今度は臓器ごとに問題を抱えている場合の負担を確認していきたいと思います。

全身麻酔によるリスク

 
 

全身麻酔による臓器負荷とリスク症状

リスクイメージ

循環器・内蔵や神経系などに何らかの問題を抱えている場合には、以下のリスクが大きくなります。

臓器増加しやすい全身麻酔リスク
心臓心臓のポンプ機能が下がり血液の循環不全を起こしやすい
呼吸数低下を起こしやすい
肝臓麻酔薬の代謝機能が低下して麻酔効果が予測できなくなる
腎臓麻酔薬の排泄機能が低下して麻酔薬の作用・調節に影響を及ぼす
脳・神経系特に脳圧が高くなる病気の場合に、脳への血流が行き渡らなくなる

問題を抱えている臓器があったり、内蔵機能が落ちているとより副作用が出やすくなります。

また肝臓や腎臓で麻酔薬を代謝し排泄されることを前提に麻酔コントロールをしているため、肝臓・腎臓で麻酔薬の代謝・排泄が正常にできないと麻酔の効果が読みにくくなり、副作用を引き起こしやすかったり、想定以上に麻酔がかかりにくいことや、あるいは麻酔から目覚めにくいということが起こるようです。

シニア犬について

シニア犬になってくると全身麻酔のリスクが高いとされるのは、どこかに疾患を抱えている場合が多いことにプラスして、加齢によって全身臓器が急な変化に対応する力(予備機能)が落ちているからだとされています。

全身麻酔で起こりうる副作用一覧

全身麻酔投与時には、主な循環器・内蔵・神経系へどのように影響し、どのような副作用を引き起こしやすくなるか前項で確認しましたが、

全身麻酔投与によるリスクを改めてリストアップしたのが下記です。

  • 循環障害
  • 呼吸障害
  • 肝機能障害
  • 腎機能障害
  • 神経症状
  • ショック症状
  • 精神症状
  • 心停止
  • 麻酔薬に対するアレルギー
  • 誤嚥性肺炎
  • 膵炎

全身麻酔のリスクというと一番は「心停止」つまり死亡リスクが頭に浮かびますが、実際に細かく見ていくと全身麻酔のリスクは心停止以外にも多岐に渡ることがわかります。

麻酔薬を投与したときのアナフィラキシー反応(アレルギー反応)については、最も図ることができないリスクとされています。

もちろんこれらのリスクが必ず起こるわけでもありませんが、家族としてはその確率を少しでも低くしたい、他の治療方法と併せて手術を検討することも多いためどのくらいの確率か見積もりたいと思うものではないでしょうか。

全身麻酔による犬の致死率

犬の麻酔リスク評価にあたりASAステータスという基準があります。

ASAステータスは、アメリカ麻酔学会(ASA)の基準に従って動物の身体状態を分類し麻酔リスクを評価するものです。

リスク
ASA 動物の状態 犬の
麻酔関連死率
 Ⅰ 全く健康もしくは局所的疾患で、全身状態は極めて良好な動物 【認識できる疾患がない動物】
:去勢、避妊、断耳手術
0.05%-0.591%
 Ⅱ 局所的疾患で全身状態は良好、もしくは軽度の全身疾患のある動物 【ショック症状の無い骨折した動物、代償機能のある心臓疾患動物】
:老齢動物、軽度の骨折、肥満、皮膚腫瘍、潜在精巣
0.726%
 Ⅲ 中程度〜重度の全身疾患があり、活動低下が認められる動物 【脱水・貧血・発熱の有する動物】
:肺炎、心雑音、貧血、発熱、脱水、慢性心疾患、開放骨折
1.01-1.33%
 Ⅳ 生命にかかわる重度の全身疾患で、活動ができない動物 【重度の脱水、貧血、発熱、尿毒症の有する動物、代償機能が破綻した心臓疾患動物】
:尿毒症、膀胱破裂、脾臓破裂、横隔膜ヘルニア、心不全、腎不全、肝不全
18.333%
 Ⅴ 極めて重篤な状態にあり、手術の有無に関わらず24時間以内の生存が期待できない動物 【重度のショック症状、重度の損傷を有する動物】
:多臓器不全、重度の出血、極度のショック、極度の脱水、末期腫瘍、長時間の胃拡張捻転
 

麻酔処置での犬の致死率に関する調査はそれほど多くないようですが、動物病院から致死率について説明を受けたりHPで見る場合、どの調査を元に解説や説明をするかによって若干の違いはありそうです。

また、実際に今回セナの手術では、獣医師からセナがどのステータスに該当するか?という直接的な話はありませんでしたが、おそらく日本の動物病院でも多くの場合全身麻酔のASA評価を取り入れており麻酔リスクの評価を裏側ではされているのかな、と調べていて思いました。

ロジックで攻める 初心者のための小動物の実践外科学
よこやまペットクリニック(埼玉)
壱岐動物病院(長崎)
ナース専科
Risk of anaesthetic mortality in dogs and cats: an observational cohort study of 3546 cases(犬と猫の麻酔薬による死亡のリスク)

【まとめ】
家族として「犬の全身麻酔を知ること」

歯医者に行くゴールデン・レトリーバーセナ7歳6ヶ月

セナの歯の破折治療手術に際し全身麻酔について改めて学びました。

治療ための手術に伴う"全身麻酔"にフォーカスを当てた記事なので、記事の内容は「治す」ことが含まれずに、リスクや副作用、最悪の場合に致死率などばかり...

ちょっと気が滅入るような内容だったかもしれません。

でも、これがセナの受ける全身麻酔を伴った手術とはこういうもの。

セナについては、東洋医学のドクターから全身麻酔のリスクが健康体の子よりも高いという指摘を受けておりましたので、全身麻酔をかけることに躊躇いがありました。

セナ、7歳。

歯の治療をするための全身麻酔によって、セナの寿命を縮めたくなかった。

長生きしてもらうには必要だと先を見据えた治療で、副作用が残ったり、命が削られたらと思ったら怖くて仕方なかった。

ゴールデン・レトリーバーセナ6歳7ヶ月

でも....

欠けてしまった歯の治療は長期的にみるとセナにとって必要であるものの、想定される手術時間も長いために年齢を重ねるにつれて判断は今よりも難しくなっていく可能性の方が高いこと

セナにはまだまだ長生きしてもらいたいし、できると信じる気持ち、、、

そして、執刀医師及び東洋医学の医師に改めて麻酔リスクを相談した上で手術することに決めました。

そうして、手術を決めたならば

セナの手術前にしなくてはいけないことの一つは、セナの身体を整えると同時に私の不安をゼロにはできなくても極力拭うこと。

「セナ治るよ!」って「大丈夫だから!」ってしっかり自信を持って送り出したい。

セナを安心させたい。

不安はリスクの裏返し。

リスクが減れば不安も減る。

歯科診察を待つゴールデン・レトリーバーセナ7歳6ヶ月

辿り着いたのは、「知らないことを知る」「できることをやる」というシンプルなことでした。

そのために全身麻酔をしっかりと知るところからスタート。

全身麻酔がどうやって身体に効くのか知り、それに伴いどんな副作用リスクが出るのか....

東洋医学の医師がセナになぜ麻酔リスクがあると話していたかについても、以前より腹落ちしました。

闘うには相手を知ることから。

全身麻酔を乗り越えることはもちろん、副作用なく、身体の回復を早めたい。

手術が終わったその先にある、元気一杯の人生が目的だからね。

冒頭にも書きましたが、基本的には全身麻酔のリスクについては獣医師が判断指針を出してくれます。

医師のアドバイスを参考に家族が愛犬の手術を判断する。

判断こそすれ、全身麻酔については飼い主の介入できる要素は大きくないかもしれません。

でも、決してゼロではありません。

家族もやれることがある!やれることをやる!

ゴールデン・レトリーバーセナ7歳6ヶ月水遊び
手術終わったらたくさん遊べるからね!


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