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「春先から続く下痢」に初めて試した漢方 「四逆散」【8歳5ヶ月】

セナ8歳の春 桜を見に公園へ

ゴールデン・レトリーバーセナ8歳4ヶ月〜5ヶ月。

8歳の春、続く下痢に2種類の漢方を処方してもらいました。

この記事は2種類の漢方のうち、5月はじめに最初に処方してもらった漢方「四逆散」について取り上げています。

漢方「四逆散」の特徴を確認するとともに、獣医師から伺った処方の理由や効かなかった理由の推測をまとめました。

8歳春のお腹の調子

成長記録にも書いていますが簡単に8歳春のお腹の状態を書き留めておきます。

ゴールデン・レトリーバーセナ 8歳3ヶ月

3月の終わりから少しずつ軟便が増えていき、4月は下痢や軟便の日が多くなりました。

それでも4月は何とか踏ん張り良いうんちをすることもあり、体重も減ったものの28.5kg程度をキープ。

暖かくなったかと思えば夜は急に冷え込んだりする春の気候でしたから、お腹の調子が不安定になったとしてもおかしくはありませんでした。

何とかこのまま乗り越えたいなと思っていましたが、4月最終週に一段とお腹の調子が悪化し、5月に入りさらに下痢の日が多くなっていき、ほぼ毎日のように下痢をするようになってしまっていました。

そんな時、鍼治療のドクターから「毎年春に下痢をするなら飲んでみても」ということでこれまで試したことのない漢方を処方してもらいました。

 
 

春は特に調子が悪くなりやすい

セナの場合、お腹の調子を崩すのは何も春に限ったことだけではありません。

ただ、毎年春は調子が落ちやすい傾向もある上、

1年前から鍼を始めて7歳夏・秋・冬とこれまでと比べれば比較的お腹のコントロールができていた中で、春になってまた以前のように月単位で軟便・下痢をしているとなるとやはり春にはより調子を崩しやすい傾向があるといえるのだと思います。

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鍼治療のドクターから漢方を処方してもらうのはこれが初めてでした。

初めての漢方①
「四逆散」

5月GWが終わる週末、鍼治療を受ける日でした。

この前日の夜中にも下痢をしており、そこで「毎年春に下痢をするなら」とドクターから提案のあった漢方が「四逆散」でした。

この日漢方を処方してもらおうとは思ってはいなかったのですが、ドクターの提案もあって試してみることにした、そんな流れでした。

「四逆散」とは

新しい漢方開始 ゴールデン・レトリーバーセナ 8歳4ヶ月

一言で言えばセナは今「温める力」も「巡らせる力」も少ない、との見立てから「四逆散」の処方に至ったわけですが、まずは「四逆散」という漢方の特徴を押さえておきたいと思います。

「四逆散」漢方の特徴

  • 肝気を巡らせて症状を軽減する理気剤(理気疎肝剤)
  • 胃痛・腹痛・食欲不信などの消化器症状に
  • イライラ・抑うつ・不眠などの精神神経症状に
  • 主に気滞が起こっている時や気滞体質に
  • 陽盛、熱証タイプが基本処方

元々気が滞りやすい体質でなくとも、季節や環境から身体や心がストレスを受け、気の流れが悪くなって滞り気滞に陥ってしまった時に処方されることが多い漢方。

中医学の「肝(かん)」とは

中医学の「肝(かん)」は西洋医学の肝臓を指すわけでありません。

漢方(中医学)における肝の主なはたらきは気・血(けつ)・津液(しんえき)の巡りをコントロールすることです。

特に気と血の巡りに強く関係しています。これらの流れを調節するはたらきを疏泄(そせつ)と呼びます。それ以外にも肝は血をためたり、精神状態の安定化にも貢献しています。他にも肝は眼、爪、筋肉のはたらきやその状態を支えています。

女性とこどもの漢方学術院

「肝」は自律神経にも関わっているとされています。

 
 

「四逆散」処方の理由

「肝」をケアするために「四逆散」をというドクターからの提案には、具体的にはこんな理由がありました。

  • 肝脾不和が起きている可能性
  • セナは脾が元々弱い中、さらに肝が弱ることで下痢が起きている可能性
  • 肝は調子が落ちると脾(消化器全般)を攻撃するので、元々弱い脾がさらに弱る
  • 肝の不調には柴胡などの巡らせる漢方がいい
  • 身体全体がしっかり温かいわけではないのに暑がるのは中に熱がこもっている可能性(巡っていない)

この日、珍しく手足がややひんやり感じました。

しかも鍼治療に来ている時で家でじっとしている時でもないのに、手足がややひんやり感じるのは身体が巡っていない証拠。

"暑いと感じるのに手足が熱くない"という症状は「四逆散」にぴったりなんだそう。

柴胡は単体で手に入りにくい生薬で薬膳では代用になるようなものがないので「四逆散」を試してみてもいいかも、と。

暦の上では夏だけど

5月は暦の上では夏なので基本的に中医学でのケアも夏が基本とはなりますが、この日は強風も吹き荒れており"まだ春の気候が続いている感じ"もありました。5月のはじめで、まだ春の空気でした。

「肝」は春に負担がかかりやすいとされていますが、春先から下痢や軟便を繰り返していたことも、肝をケアしたらいいのではないかという見立てにつながりました。

あげる際の注意点

「四逆散」は身体をやや冷やす漢方に分類されるそうです。

体質は陽盛、熱証タイプが基本処方です。

体質を明確に〜タイプと分類するのは難しくいくつかの体質が絡んでいることも多いそうなのですが、セナは典型的な陽盛・熱証タイプではないのは明らかで、どちらといえば陽虚といわれる温める力が不足しているタイプです。

「四逆散」は短期的に使うことが多いそうで、長期的に使う場合には温めの漢方と一緒に処方することもあるとか。

そのため、セナに「四逆散」をあげる際にはごはんにジンジャーなどの身体を温める食材を加えてください、と指示をもらいました。

実際に「四逆散」をあげてみる

 
 

まずはディアバスターを1週間

鍼治療の日ゴールデン・レトリーバーセナ8歳4ヶ月

5月に入り下痢が悪化していたこともあり、鍼治療の当日の昼間からちょうどディアバスターをあげ初めていました。

ディアバスターをやめて「四逆散」にすぐに切り替えることも考えたのですが、「四逆散」は基本的には肝を通して下痢を改善させる漢方のようなので、出来れば下痢が悪化している真っ最中というよりも、症状がやや落ち着いている頃にあげた方がいいのではないかという理由と

「四逆散」を試すのがはじめてなのでセナの身体にどう反応が出るか全くわからなかったことからまずはディアバスターで少しでも胃腸機能を回復させることを目指して、あげていたディアバスターをそのまま継続しました。

ディアバスターのおかげだったかどうか定かではないのですが、ディアバスター服用から7日目でやっと形のあるうんちをしました。

この時はディアバスターのおかげだと思っていたのですが、後々考えたらディアバスターが効くにしては遅く(セナは通常4~5日)、他の要因で一時的に止まったのかもしれません。
➤詳しくは8歳5ヶ月の成長記録

「四逆散」を飲み始める

こうして1週間半ぶりにやっと形のあるうんちになったその日、ディアバスターから「四逆散」に切り替えました。

一旦下痢も止まったし「四逆散」でこのままさらに回復してほしい!

そんな期待がありました。

しかし、「四逆散」服用3日目からまた下痢になってしまい、結局朝から晩まで一日を通して下痢が止まっていたのはたった1日でした。

「四逆散」は続けて1週間

「四逆散」を1週間続け、悪化こそしませんでしたが改善したともいえない状態でした。

まだ服用して1週間だったためもう少し飲んで様子見た方がいいのかなと思っていたのですが(こちらのドクターが2週間が大体目安と話していたこともあり)、ドクターからもう一つの漢方を提案されそちらに切り替えることになりました。

「四逆散」服用の1週間のあいだに、就寝時の室温調整をしてセナの快適温度を探ってみました。これが功をそうしたのか、翌日から朝方〜午前の下痢がかなり減少しました(午後〜夜は相変わらずの下痢)。

【獣医師の見立て】
「四逆散」はなぜ効かなかったのか

結局、はじめて試した「四逆散」ではセナの下痢は改善しませんでした。

ドクターの見立てはこうでした。

獣医師見解
肝は弱っているとは思う。ただ、先にモレを止めた方がいいかも。

それで次のもう一つ初めて試す漢方「腎固」というモレを止めるとする処方に繋がっていくのですが....。

「腎固」については8歳5ヶ月の成長記録、および追加で詳しい記事を書ければと思ってます。

ドクターの見立ての他に、「四逆散」が効かなかった理由を調べながら自分なりに考えてみました。

「四逆散」がセナに
効かなかった理由を考えてみる

ここからはドクターが話していた話ではありません。

「四逆散」が効かなかった理由を考えてみる

「四逆散」が単にセナの下痢の原因と合わなかった

「四逆散」の量が合わなかった

「四逆散」だけでは効かなかった

「四逆散」が効かなかったと一言でいっても、様々な理由が考えられます。

「四逆散」はやや冷やす漢方

四逆散を処方されてから四逆散がどんな漢方なのかを調べていたのですが、

最初に思ったのはやはり温める力が少ないセナには、いくら気(肝)を巡らすことが必要とはいっても冷えてしまうのではないか。

四逆散は身体を冷やす傾向にあるということ、この点がひっかかっていました。

ドクターのアドバイス通り、温めを補うためにジンジャーなどを食事に加えていたのですがやや冷やす漢方に対して十分ではなかった可能性。

組み合わせや量が適切ではなかった可能性。

もちろん肝も弱っているのだと思うのですが、それ以上に下痢が続いて脾が弱っている可能性が高く、肝のケアだけでなく脾のケアも同時に必要だった可能性。

他には、もちろんセナのキーとなる自律神経などの影響が大きかった可能性。

「温めの力が足りない」にも
2種類ある

セナは「温めの力が足りない」。

これは何度もドクターにいわれていることです。

前述でも触れましたが

"暑いと感じるのに手足が熱くない"という症状は「四逆散」にぴったり

とドクターも話していたように、四逆散の処方目安の1つに「手足が冷えている」というのがあるようです。

「四肢や身体はそれほど暖かくないけど(冷たいことはほぼない)、パンティングが多く暑がっているように見える」ことがセナも多いので、この点も合致します。

ただ、この「手足が冷えている」は2つに分かれるようです。

四逆散の『四逆』は「四肢逆冷」の略、すなわち、手足が非常に冷える症状のことです。

冷えには大きく分けると2種類あって、
1.温める力自体がないもの(陽虚、気虚など)
2.温める力はあっても、何らかの理由で、温めが全身に及ばない場合
があります。

四逆散の場合の手足の冷えは後者です。

四逆散の場合の手足の冷えは後者、つまり「温める力があっても....」なんです。

セナはどちらかというと 1.温める力自体がないもの(陽虚、気虚など)である可能性が高い。

だから、四逆散が効かなかったのではないかなと思います。

温める力があれば、なんらかの理由で全身に回っていないそれを肝を機能させることで巡らすことができる、それが四逆散なんじゃないかと。

温める力がなければ、いくら回したって元の温める力がないのだから、一向に温まらないのだと思います。

この引用には続きがあります。

四逆散の場合の手足の冷えは後者です。

四逆散の使い手として有名な先生に、和田東郭先生(1744-1803)という漢方医がいらっしゃいますが、「四逆散というのは、大柴胡湯の応用と考え、お腹やみぞおち、肋骨下に悪い反応があり、なおかつ手足が冷えるものは、四逆散でよくなる」としてずいぶんと多くの方々の伝染病や一般病を治療されたそうです。

但し、重篤な冷えで、自ら温めようとする力のないものには効果なし、とのことです。

オリーブ薬局「冷え性と漢方」

セナの下痢と「四逆散」

この記事では、ゴールデン・レトリーバーセナ8歳の5月に処方してもらった漢方薬「四逆散」の特徴、「四逆散」を服用しての体調変化、「四逆散」が効かなかった理由などについてまとめました。

春の下痢に対処したい

鍼治療のドクターから漢方を処方してもらうのは初めてで、提案があった「四逆散」はセナがこれまで服用してきた漢方とは系統が異なっていました。

セナが体調を崩しやすい原因(自律神経など)は別にもあるため、「四逆散」が効くのだろうか?と思いつつも、春の下痢へのアプローチとしては新しい視点でしたし、もし今回試して効果がでれば、また来年の春に体調を崩した時にも使えるかもしれないから試してみようという心持ちでした。

合う点もあるけど

中医学でいうところの「肝」は自律神経にも関わるとされています。

それに、ゲップも4月頃から多くなりその状態が続いていました。(5月にはやや減ったかなと思うこともありますが、それでもでている状態)

ゲップは消化不良のほか中医学では気逆とも捉えられ、気が下に降りていかないことが原因の1つだと考えられており、「四逆散」の適用の1つの症状でもあるそうです。

このように「四逆散」の方向性が全然合わないわけではないと思います。

ただやっぱり、温めの部分は足りなかったのかなと。

とはいえ、改善に至らなかった理由はきっと温めが足りなかっただけではないでしょうし、「四逆散」は調べていると奥が深い漢方のようで、処方がちょっと難しそう、というそんな印象も受けました。

単体ではなくて他の漢方と併せて処方することも多い漢方のようです。

結局は根本は変わらないのかも

春の下痢で肝が弱る。

それは確かに季節の特性としてあると思うのですが、結局はセナの弱いところが更に弱ってしまい、こうやって下痢が続いているのだと思います。

だから季節的なものだけケアしても良くなりにくいのかもしれません。

もう一度獣医師に聞いてみた

「四逆散」について概要となぜセナに効かなかったのかを自分なりに調べ考えつつまとめていたら、「四逆散」が効かなかった理由を今回処方してくれたドクターの見解をもう一度聞きたいと思い、聞いてみました。

すると

獣医師見解
肝ではなかったということかな。

と、一言。

ふむ。

「四逆散」を中止したときの理由は

獣医師見解
肝は弱っているとは思う。ただ、先にモレを止めた方がいいかも。

でした。

ドクターから聞けた理由はこの二言だけ。

次に活かすためにはあと一歩深掘りをしてほしい、とは思うところです。

一言二言程度のドクターも結構いると思います(良し悪しは別として)。セナの若い時からかかっている中医学の診療所のドクターはそのタイプで言葉少なです。でも、今回の漢方を処方した鍼治療でかかっているドクターはいつももっと説明してくれることが多く、時間も確保している中なのでその見解に物足りなさを感じました。

今起きてる症状(今は、続く下痢)の根本原因をどう捉えるか、そこがヒットしないと漢方の処方は難しい。

漢方はその根本原因を外すとまるっきり効かない。

これはその道のプロの方たちの処方話を読んでいて感じたことであり、漢方処方の難しさがここにあるんだろうなと思いつつ、実際にセナに漢方をあげる中で実感したことでもあります。

対処療法である西洋薬ではある程度の見立てで効くこともありますが、漢方は根本原因が掴めてないと全くといっていいほど効かないことも多いです。

ヒットしないことがあっても、次に活かせれば意味があるからしっかりと根本原因を考えていきたい。

そうじゃないと治療の過程が意味をなさなくなってしまう。

次の漢方処方へ

さて、「四逆散」を1週間で中止した後、ドクターの勧めでもう一つ初めて服用する漢方の処方に至りました。

「四逆散」と同じ5月、セナ8歳4ヶ月〜5ヶ月のことです。

これも結局中止することになりますが、初めての漢方処方だったこともあり記事にしておきたいと思います。

8歳5ヶ月の成長記録の成長記録でも2つの新しい漢方について少し触れてます


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